伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

山行(杜牧)


 【杜牧 山行詩一首 王志慧(上海)書】


 朝夕、めっきり涼しくなり、ハイキングシーズンの到来となりました。


 本日は、「山歩き」をテーマとした漢詩を一首ご紹介します。


 詩題は「山行」、つまり「山歩き」という意味です。


 作者は、晩唐の詩人杜牧です。


 晩唐期の詩風は、唐王朝の衰退した世相を反映して、美辞麗句に偏った自己満足的かつ感傷的なものが多くなっています。


 しかしながら、この杜牧は例外的に晩唐の詩風に染まらず、盛唐期の詩人のような堂々たる詩風で格調高く詠い上げています。


 このため、盛唐期の大詩人杜甫を「老杜」、杜牧を「小杜」と呼んで並び称されています。


 「山行」の詩は、幾つもの解釈が可能であり、それがこの詩に深みを持たせています。


 以下、伊賀山人独自の解釈を掲載して読者のご笑覧に供します。



白文


  山行
 遠上寒山石徑斜,
 白雲生處有人家。
 停車坐愛楓林晩,
 霜葉紅於二月花。



読み下し文


  山行(さんこう)
 遠く寒山に上れば 石徑(せっけい)斜めなり,
 白雲生ずる處(ところ) 人家有り。
 車を停(とど)むるは 楓林(ふうりん)の晩(くれ)を愛(め)でんが坐(ため)なり,
 霜葉は 二月(じげつ)の花よりも 紅(くれなゐ)なり。



現代語訳


  山歩き
 遠くにある晩秋の山に、つづら折りになって続く石畳の小道を登って行った。
 更に遠くの白雲が湧き立つ仙境のようなところにも人が住む家屋が有るのが見える。
 カエデ林の夕暮れの景色を観賞するため、
山歩き用の荷車を止めた。
 霜で色付いた紅葉は、2月の桃の花よりももっと紅くて美しい。




 【山行詩意圖】