伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

最後一夜(最後の一夜)

 【映画「金大班的最後一夜」で主人公:金兆麗を演じた香港女優:姚煒】


 「最後一夜(最後の一夜)」は、1984年に公開された台湾映画《金大班的最後一夜(金リーダーの最後の一夜)》の主題歌として、映画のラストシーンで歌われた楽曲です。


 この映画は、1968年に刊行された白先勇の著作になる同名の短篇小說が原作で、内容は、上海で20歳の頃からショーダンサーとして活躍して大班(班長:チームリーダー)に指名されていた金兆麗が台北に移って、40歳の誕生日を目前にして諸般の事情から、心ならずも裕福な実業家に嫁ぐためにダンサーを引退する「最後の夜」までを描いたものです。
 東洋の魔都上海と台北の夜に開花した女の生きざまが、過去の船乗りとの悲恋など様々な追憶の中に描かれて、哀愁と切なさとが心に迫る作品です。


 主題歌の「最後一夜(最後の一夜)」は、映画のラストシーンで金大班がダンサーとしての最後の夜を終えて、過去20年の来し方を振り返りながらスーツケースを手にして立ち去る時にエンディングテーマとして演唱された楽曲です。


 作詞は慎芝、作曲は陳志遠、演唱は蔡琴で三人とも台湾人です。
 歌詞の内容は、過去を回想し華やかな舞台に立つ身であればこそ心に迫る寂寞感を述べて最後の夜の感慨を詠じたものです。


 今回は、その映画の1シーンと蔡琴小姐のオリジナル版の演唱をご紹介します。


 なお、詞中に見える「紅男綠女」とは、分かりにくい表現ですが、これは「紅灯緑酒」
を踏まえたものです。
 「紅灯」とはバーやキャバレーなど盛り場の照明を指し、「緑酒」とはそこで提供する上等な酒を示す慣用句です。
 従って「紅男綠女」とは、酒場に出入りする着飾った客の男と酒席に侍るホステスとを表わしています。


 漢詩に於いても、「紅燈緑酒」と言う詩語は、花柳界を連想させることが多いので注意を要します。
 因みに伊賀山人が読書に使う燈火は、例え赤色でも漢詩では「靑燈」と表現しています。



 映画「金大班的最後一夜」の中での蔡琴原唱版▼

金大班的最後一夜[ 歌聲舞影慶百年 - 經典華語歌唱電影回顧展 ]



 蔡琴レコード原唱版▼

蔡琴 - 最後一夜 / Last One Night (by Tsai Chin)



 廖尉希(WeiXi)小姐二胡演奏版▼

【二胡】《懷舊老歌》最後一夜(COVER)



最後一夜
最後の一夜           
          作詞:慎芝    作曲:陳志遠 
踩不完惱人舞步
喝不盡醉人醇酒
良夜有誰為我留
耳邊語輕柔
走不完紅男綠女
看不盡人海沉浮
往事有誰為我數
空對華燈愁

踊っても踊りきれない人を虜にするダンス
飲んでも飲み尽くせない人を酔わせる強い酒
美しい月夜に、一体誰が私のために留まって
耳の傍で優しく語ってくれるでしょうか?
生涯を共にはできない着飾った男と酒場の女
見ても尽きせぬ人の世の浮き沈み
嘗て、一体誰が私のために数えてくれたでしょうか?
華やかなライトに空しく照らされる私の愁いの数々を


我也曾陶醉在兩情相悅
像飛舞中的彩蝶
我也曾心碎於黯然離別
哭倒在露濕台階
紅燈將滅酒也醒
此刻該向它告別
曲終人散回頭一瞥
嗯......最後一夜

私も嘗て、共に愛する喜びに心を酔わせたことがある
まるで、 空を舞い踊る色鮮やかな蝶のように
私も嘗て、暗く悲しい別れに心を砕かれたこともある
泣き崩れて涙は石段を濡らした
紅蓮の燈火はまさに消えようとし、酒もまた醒めようとしている
今このとき、私は全てのものに別れを告げる
曲は終わり人々が帰ったあと、私は振り返ってもう一度眺める
あ......最後の一夜なのだと…


我也曾陶醉在兩情相悅
像飛舞中的彩蝶
我也曾心碎於黯然離別
哭倒在露濕台階
紅燈將滅酒也醒
此刻該向它告別
曲終人散回頭一瞥
嗯......最後一夜

私も嘗て、共に愛する喜びに心を酔わせたことがある
まるで、 空を舞い踊る色鮮やかな蝶のように
私も嘗て、暗く悲しい別れに心を砕かれたこともある
泣き崩れて涙は石段を濡らした
紅蓮の燈火はまさに消えようとし、酒もまた醒めようとしている
今このとき、私は全てのものに別れを告げる
曲は終わり人々が帰ったあと、私は振り返ってもう一度眺める
あ......最後の一夜なのだと…


我也曾心碎於黯然離別
哭倒在露濕台階
紅燈將滅酒也醒
此刻該向它告別
曲終人散回頭一瞥
嗯......最後一夜

私も嘗て、暗く悲しい別れに心を砕かれたこともある
泣き崩れて涙は石段を濡らした
紅蓮の燈火はまさに消えようとし、酒もまた醒めようとしている
今このとき、私は全てのものに別れを告げる
曲は終わり人々が帰ったあと、私は振り返ってもう一度眺める
あ......最後の一夜なのだと…