伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

友達にしたい人(論語編)


 「論語」は、今から約2500年前の春秋時代の思想家であり哲学者であった孔子とその高弟の言行を記録した書物です。


 「益者三友、損者三友」として人口に膾炙されている、付き合って益のある友人とその逆に付き合うと損をする友人のことについては、論語 季氏篇第十六に記されています。
 短い文章ですので、以下、全文を掲載します。


《白文》
 孔子曰。
 益者三友、損者三友。
 友直、友諒、友多聞、益矣。
 友便辟、友善柔、友便佞、損矣。


《訓読体》
 孔子曰(いわ)く。
 益者三友、損者三友。
 直(なお)きを友とし、諒(まこと)を友とし、多聞(たぶん)を友とするは、益なり。
 便辟(べんぺき)を友とし、善柔(ぜんじゅう)を友とし、便佞(べんねい)を友とするは、損なり。


《口語訳》
 孔先生がおっしゃった。
 有益な友が三種。有害な友が三種ある。
 直言して隠すことのない「正直」な人を友とし、「誠実」で裏表のない真心のある人を友とし、「博識」な人を友とするのは有益である。
 体裁を飾って素直でない人を友とし、表面を取り繕って媚びへつらう人を友とし、口先ばかり達者で誠意のない人を友とするのは有害である。


 友達にしたい人とは、直(正直)、諒(誠実)、多聞(博識)の三者です。


 直を友とすれば、自分の過ちを知ることができます。
 諒を友とすれば、自分もその影響で誠実な人間になれます。
 多聞を友とすれば、自分も物知りになれます。なお、ここでいう「多聞」とは、全てを知っている人という意味ではありません。人はそれぞれ得意とする分野が異なっています。「餅は餅屋」、数学の先生に医学のことを聞いても分かるはずがありません。例えば、持病に苦しみ治療法を探し求める人にとっては、医者や同病者などが「多聞」ということになります。


 論語は、君子たらんとする者の修養の書です。


 「類は友を呼ぶ」


 孔子は暗に、君子たらんと欲する者、先ずは自らが『益者三友』と成るように努力することが肝要であると説いているのでありましょう。



 友達シリーズの最後に、明治から昭和に至るまで活躍した詩人与謝野鉄幹が、明治30年8月京城に於いて作り、旧制第三高等学校(現在の京都大学)寮歌としても歌い継がれていた「人を戀ふる歌」の現在バージョンの詩の一節を抜粋してご紹介します。なお、この詩は16番(一説には17番)まで続く長いものですが、恋愛というよりも、殆ど男子の気概と友情を謳いあげたものです。


 【人を恋ふる歌】
 妻を娶らば 才長けて
 身目(みめ)美(うるわ)しく 情け有る
 友を選ばば 書を読みて
 六分(りくぶ)の侠気 四分(しぶ)の熱

   ・・・(後略)・・・


 《口語訳》

 妻にするなら、賢明で才能が有り、

 姿や瞳が美しく、心優しい人がよい。

 友を選ぶのであれば、学問に精励し、

 弱者を助ける男気と物事に取り組む情熱を持っている人がよい。