伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

盼與寄(パン ユー ジー:望むことと送ること)


 「盼與寄」(パン ユー ジー:望むことと送ること)は、台灣の歌手潘安邦(パン・アンバン、1954年9月10日ー2013年2月3日)が1981年7月に発表した自身4枚目となるアルバム〈回家〉の4 曲目に収録している楽曲で、蔡琴(ツァイ・チン、1957年12月22日-)とのデュエット曲です。


 この楽曲は、潘安邦が1979年9月1日に発表したデビューアルバム〈外婆的澎湖灣〉に収録している楽曲、「盼」(パン:切に願う)の別バージョンです。


 「盼與寄」の作詞・作曲は「盼」と同じく周興立(チョウ・シンリー)博士で、曲は同じで歌詞も「盼」と同様1句6字の4句からなる1首24文字の詩2首からなっています。
 詩の「其の一」は「盼」と同じものですが、流れゆく雲に託して自分の想いを恋人に伝え、喜び溢れる手紙が帰って来るのを切に望むとの心情を、潘安邦ではなく蔡琴が詠じています。
 「其の二」は「其の一」への返歌となっており、蔡琴の願いを受けて琴を爪弾き詩を口ずさみながら心を籠めた手紙を送りたいという願いを潘安邦が詠じています。


 なお、台灣の校園民歌(學園フォークソング)の草分け的存在として知られる周興立博士は、1976年に米国へ留学してニューヨーク 州のコロンビア大学で芸術修士号及び教育修士号並びに教育博士号を取得した知識人です。
 その後、米国に留まり ニューヨーク市のタレントスクールの校長を務める傍らニューヨーク市立大学やフォーチュン大学など複数の學校の教授を努め 、アジアの移民史と中國文化の講座を担当しています。
 1979年に台湾へ一時帰国していた時に新人歌手の潘安邦と知り合い、デビューアルバムでは《盼》のほか《紛紛飄墜的音符》や《想你》などを提供しています。
 なお、《盼》の詩は楽曲では2首しか使用されていませんが、博士自身の言によるとその当時から数首を連作で作っていたようです。
 この《盼與寄》に使われている其の二の詩については〈回家〉のレコードに同梱されている歌詞カードとその説明書によると、博士がパリ滞在中に新作として台北に送ったものだそうです。


 周興立博士と潘安邦の交流はその後も続き、潘安邦が2013年に早世するまで絶えることはありませんでした。



 盼與寄
 望むことと送ること
                 詞・曲:周興立  演唱:潘安邦 蔡琴


《其一(蔡琴部分)》
我把想你的心 
托給飄過的雲
願我讚美的風 
帶來喜悅的信

我れ你(なんじ)を想ふ心を把(と)りて 
飄(ただよ)ひ過(よ)ぎる雲に托(たの)み給さん
願はくは我が讚美の風 
喜悅の信を帶來(たいらい)せよ

私はあなたを想う心を 
漂う雲に言づけて届けよう
私が賛美する風が 
喜びの手紙を持ち寄ってくれることを願う


《其の二(潘安邦部分)》
彈起相思的弦 
低吟愛的詩篇
願借心心相連 
捎去想你的簽

彈(ひ)き起こす相思の弦 
低く吟ずる愛の詩篇(しへん)
願はくは心と心の相(あ)ひ連(つらな)るを借りて 
你(なんじ)を想ふ簽(せん)を捎去(せうきょ)せん

君に思いを寄せながら弦を爪弾き
小さな声で詩を口ずさむ
心と心の絆に頼って
君への想いを書き送りたいと願う


(全歌詞繰り返し)


(間奏)


(再度全歌詞繰り返し)






 追記:

 台灣のエミ老師から本楽曲《盼與寄》に関する貴重な情報を頂きましたので、本記事を一部加筆修正しました。

                              2019.3.18 伊賀山人敬白