伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

今宵多珍重(今夜が大切)


 《今宵多珍重》は、香港の女歌手崔萍(ツゥイ ピン1938年-)が1961年に発表した楽曲です。
 作曲は香港では有名な作曲家王福齡(1925年-1989年)、作詞は上海出身で現在は米国籍の作家林達(1952年-)が担当しています。


 この歌詞の大意は、明日旅に出る恋人との名残を惜しむ乙女が明日のことなど考えずに今夜を大切にしようと彼に呼びかけるとともに自らに言い聞かせる内容になっています。
 なお、詞を書いた林達は元々小説などの作家であるためか、この歌詞は四節からなっていますが、一首全体ではそれぞれの節が漢詩のような起承転結に相当する四段構成になっています。


 58年前に発表されたこの楽曲は、その後漢文化圏で数多くの歌手によってカバーされていますが、その中から今回は台灣で「絲絨歌后(ビロードの歌声を持つ女王)」と称されてる蔡琴(ツァイ チン1957年12月22日-)の演唱でご紹介します。



 今宵多珍重
 今夜が大切
                   作詞:林達 作曲:王福齡 演唱:蔡琴
南風吻臉輕輕 飄過來花香濃
南風吻臉輕輕 星已稀月迷濛

南風がそっと顔に口づけする 濃やかな花の香りが漂ってくる
南風がそっと顔に口づけする 星はまばらに月はおぼろに見えている


我們緊偎親親 說不完情意濃
我們緊偎親親 句句話都由衷

私達は親しく寄り添っている 心よりの思いは深く語り尽くせない
私達は親しく寄り添っている 一言一言は全て真心から出てくる


不管明天 到明天要相送
戀著今宵 把今宵多珍重

明日のことなど考えたくない 明日になれば貴方を見送らねばならないのだから
今夜が恋しい 今夜を大切にしたい


我倆臨別依依 怨太陽快昇東
我倆臨別依依 要再見在夢中

私たち二人は別れに臨んで名残惜しく 太陽が東の空に忙しげに昇るのが恨めしい
私たち二人は別れに臨んで名残惜しく 必ずもう一度会いたい 夢の中でも




今宵多珍重 - 蔡琴