伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

茶十徳

 【茶十徳: 石川県能登の書家川崎洋岳先生直筆の書】


 日本で喫茶の習慣が広まったのは、今から八百年ほど前に仏教禅宗の臨済宗を開いた栄西禅師(えいさいぜんし)が、南宋の素朴を尊ぶ禅寺での抹茶の飲み方を会得し、茶の種子や苗木を持ち帰ったことが端緒となっています。


 「茶十徳」とは、茶祖とも呼ばれたこの栄西禅師の弟子明恵上人(みょうえしょうにん)が、京都の栂尾高山寺の庭に茶の種を蒔き、お茶を飲むことの効用を『十箇条』に著し、広めたことに由来します。


 その内容は、以下のとおりです。


〇 諸神は加護す。
  お茶は強く根をはり、一年中緑を保ちます。その生命力があなたを守ります。


〇 五臓を調和す。
  お茶に含まれるたくさんの保健成分が体全体のバランス維持に役立ちます。


〇 睡眠を消除す。
  お茶は、神経を活発にさせ、頭脳と血液の循環を増進します。


〇 煩悩を消滅す。
  お茶の深い味わいは、わずらわしい世事の疲れを忘れさせます。


〇 父母に孝養す。
  お茶の深い味わいは素直な心を芽生えさせ、父母への感謝の心を育てます。


〇 息災にして安隠なり。
  お茶は養生の仏薬ともいわれ、毎日を元気に暮らすことができます。


〇 天魔を遠離す。
  お茶の香気は疲労を解消し、心の迷いまでも払拭します。


〇 諸人を愛敬す。
  一服のお茶が楽しい語らいを生み、家族の団らんや友愛の場を醸します。


〇 寿命は長遠なり。
  心に煩悩なく身に病気さえなければ、日々の仕事に精励でき寿命も長くなります。


〇 臨終を乱さず。

  愛飲が心の平静を保ち、天寿を全うできます。



 お茶にはこれほど優れた効用がありますので、読者各位にも自信を持ってお勧めします。


 なお、「茶十徳」の書を額に入れて毎日見ている私は、お茶は殆ど飲みません。専らコーヒーです。