伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

伊賀山居漢詩紀行

 結盧在人境: 盧(いおり)を結んで人境にあり
 人里に庵を結んで住んでいる。


  而無車馬喧: 而して車馬の喧(かまびす)しき無し
  しかし、車の走る騒々しい音は耳に入らない。


  問吾何能爾: 吾に問う何ぞ能く爾(しか)ると
 「どうしてそんなことが出来るのか?」と自問してみる。


  心遠地自偏: 心遠ければ地自ずから偏なり
 「心の持ちようが超然としていれば、 自然と僻地にいるような気分になるのだ。」と自答する。



 采菜東籬下: 菜(さい)を采(と)る東籬(とうり)の下

 東の垣根のところで野菜を采り、



 悠然見南山: 悠然として南山を見る

 ふと顔を上げて、ゆったりと南山を眺める。


 山氣日夕佳: 山氣 日夕に佳く
 山の気配は夕方が特に素晴らしく、



 飛鳥相與還: 飛鳥 相與(とも)に還る

 鳥は群れをなして巣に還っていく。
 

 此中有眞意: 此中に眞意あり
 こんな暮らしの中にこそ真意はあるのだ。



  欲辨已忘言: 辨(べん)ぜんと欲して已に言を忘る

 それを説明しようと思うのだが、すでに言うべき言葉を忘れてしまった。



   擬陶淵明飲酒其五
  結盧在人境 而無車馬喧
  問吾何能爾 心遠地自偏
  采菜東籬下 悠然見南山
  山氣日夕佳 飛鳥相與還
  此中有眞意 欲辨已忘言

夜空を仰いで(仰望夜空)


 「夜空を仰いで」は、日本の俳優兼シンガーソングライターの加山雄三が、自身10枚目のシングルレコードとして、1966年(昭和41年)10月15日に発表した楽曲です。
  また、この曲は、加山雄三主演の映画「若大将シリーズ」の第9作として翌年元日に公開された「レッツゴー! 若大将」の主題歌としても使われています。


  作詞:作曲は「弾厚作」とされていますが、これはシンガーソングライターでもある加山雄三が、楽曲を作成するときのペンネームです。
 このペンネームは加山雄三が尊敬している作曲家團伊玖磨(だんいくま)と山田耕筰(やまだこうさく)の名に由来しています。
 作曲家にあやかったこの名からもうかがえるように加山は作曲は数多くを手掛けていますが、自ら作詞したものはほんの僅かしかありません。
 加山本人が「しがない作曲家(詞が無い作曲家)」と自称しており、殆どの作詩は岩谷時子に依頼していました。
 このためか、「レッツゴー !若大将」を解説しているWIKIでは、作詩を「岩谷時子」と誤記していますが、「夜空を仰いで」の歌詞は加山の数少ない作詞の一つです。


 映画の中で、この楽曲は香港に来ていた若大将が日本から訪ねて来たガールフレンドの澄子とデートをするシーンで歌われたものです。
 この時の加山の役どころは大学生、相手役の星由里子は高校新卒のOLという設定です。
 当時二人の実年齢は、加山が29歳、星が23歳でどちらも配役よりは年長ですが、それにしても今どきの若者に比べると10年ぐらい年上のように見えます。
 半世紀前の20代の若者の殆どは、このようなスタイルで、今に比べると遙かに老成していたと言えるでしょう。



 夜空を仰いで
 仰望夜空
                  作詞・作曲:弾厚作 演唱:加山雄三
夜空を仰いで 数える星も
君のいない砂浜は 淋しいぜ
かがやくつぶらな 君の瞳を
見せておくれ夢にでも 側にきて
仰望夜空 數的星也
你不在的海濱沙灘寂寞啦
放光的圓的 你的瞳孔
顯示落後來一側在夢也


僕はいつでも君の面影 しのんで歌ってる
君は何処で僕のことを 思っていてくれるの
我無論什麼時候你的面貌 回憶唱著
你在何處考慮我的事


歌おう明日の 虹をふたりで
消えぬ愛の幸せよ とこしえに
是二人承擔歌的明天的 彩虹
不消失的愛的幸運做永遠


(台詞)
「さみしいなあ きみがいないとつまんねえや
僕は君とはなれていられないんだ 愛してる」
 「我寂寞的   你不在我無聊
 是我與你不能適應著的 我愛你」


遠い空になつかし思い出 うかべて 歌う僕
君はいつでも僕のこと 愛していてくれるね
浮起懷念在遠的天空中的回憶唱的我
你無論什麼時候與我鋸愛


昏れゆく 波間に 君を呼んでる
僕の声がきこえるかい 逢いたいな
暮色漸濃的波浪之間叫來著 你
聽見我的聲音嗎 我想遇到你




加山雄三/夜空を仰いで (1966年)




仰望夜空戯作寄故人
         伊賀山人作
 仰望夜空星
 遙想相見日
 君涙浥我襟
 我吻涵君顔





加山雄三 - 夜空を仰いで