伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

Stand by Me (傍にいてね:站在我身邊)


 「Stand by Me (傍にいてくれ:站在我身邊)」は、アメリカのR&B歌手ベン・E・キング(Benjamin Earl King、本名Benjamin Earl Nelson、1938年9月28日 - 2015年4月30日)が1961年11月に発表した楽曲です。


 作詞・作曲はベン・E・キングとジェローム"ジェリー"リーバー (Jerome "Jerry" Leiber、1933年4月25日-2011年8月22日) とマイク・ストーラー (Mike Stoller、1933年3月13日-)との3人による共作とされていますが、実際にはリーバーが詞を作りストーラーが曲を付けたものをキングが少し手直しして完成したようです。


 この楽曲は1905年にアメリカの黒人牧師チャールズ・A・ティンドリー (Charles Albert Tindley、1851年7月7日 – 1933年7月26日) が作詞・作曲した同名の讃美歌から着想を得て作られたものです。


 元々は、ベン・E・キングが所属していた黒人コーラス・グループのザ・ドリフターズ(The Drifters)の演唱用に作られた楽曲ですが、発表直前の1960年にキングがドリフターズを脱退したためお蔵入りになっていたものを、翌年キングだけのソロで演唱して発表したものです。


 発表当時もBillboard Hot 100にて4位になる大ヒットとなりましたが、その25年後の1986年には同名映画の主題歌になってリバイバルヒットして、Billboard Hot 100にて9位にまで達しました。


 詞題の「Stand by Me 」とは、複数の意味を有する命令形の慣用句です。
 原義は「私の傍に立ってくれ」ということで、口語としては写真撮影のときなどに使われます。
 それから派生した文語としては、先ずは「Stand(立つ)」の意味が薄れて「私の傍にいてくれ」「私に寄り添ってくれ」となり、更に「by(傍)」の意味も薄れて「私を支えてくれ」「私を支持してくれ」「私に力を貸してくれ」というような意味になり、100年以上前から讃美歌などで神に祈る時によく使われる句となっています。


 この歌詞の中ではどれか一つの意味ではなく、複数の意味合いで詠じられています。
 また、主人公の年齢・性別については様々な解釈が可能ですが、伊賀流文脈判断により、寂しがり屋の少年の立場で和訳してみました。


 この楽曲は息の長いヒット曲なので、多くの歌手がカバーしていますが、今回は、本日歿後38年の命日となるジョン・レノン (John Winston Ono Lennon、1940年10月9日 - 1980年12月8日) が1975年にカバーしたものをご紹介します。

 筆者注:

 詞中に見える「Whenever you're in trouble won't you stand by me」の一文は、文法上は「例え君が困りごとを抱えている時でもいつでも、僕の傍にいてくれないか?」と解すべきですが、そのような虫の良いことは伊賀山人の美意識に反するので、「君が困っている時には僕の傍に来ればいつでも僕が力になる。」との趣旨で解釈しておきます。


 Stand By Me
 僕の傍にいてね
 站在我身邊
               
演唱:ジョン・レノン
When the night has come
And the land is dark
And the moon is the only light we see
No I won't be afraid 

No I won't be afraid
Just as long as you stand, stand by me

夜が訪れて
大地が暗くなって
僕たちに見える灯りは月だけになったとしても
僕は怖がったりなんかしない
そうさ、怖がったりなんかしないよ
ただ君が傍に 僕の傍にいてくれる限りはね

當夜晚來臨
大地一片漆黑
月亮是我們唯一能見到的光
我不害怕
我不害怕
自從你站在我身邊


And darling, darling stand by me
Oh, now, now, stand by me
Stand by me, stand by me
だから大好きな 大好きな君 僕の傍にいてね
お~ さ~ さ~ 僕の傍にいてね
僕に寄り添ってね ぼくの力になってね

親愛的,親愛的請站在我身邊
哦~ 來 來 站在我身邊
站在我身邊 站在我身邊


If the sky that we look upon
Should tumble and fall
And the mountain should crumble to the sea
I won't cry, I won't cry
No I won't shed a tear
Just as long as you stand, stand by me

もしも僕たちの見上げる空が
崩れて落ちてきて
そして山が海へと砕け落ちたとしても
僕は泣いたりなんかしない 泣いたりなんかしないさ
そうさ 涙を流したりなんかしないよ
ただ君が傍に 僕の傍にいてくれる限りはね

如果我們仰望的天空
將崩塌下來
山岳將崩塌至海中
我不會哭,我不會哭,
一滴淚都不流
只要你站在 站在我身邊


And darling, darling stand by me
Oh, stand by me
Stand by me, stand by me, stand by me~
だから大好きな 大好きな君 僕の傍にいてね
お~ 僕の傍にいてね
僕の傍にいて 寄り添って 僕の力になってね~

親愛的,親愛的請站在我身邊
哦~ 站在我身邊
站在我身邊 站在我身邊 請站在我身邊~


(間奏)


Whenever you're in trouble won't you stand by me
Oh, now, now, stand by me
Oh, stand by me, stand by me, stand by me
でももしも君の方が何か困ったことに巻き込まれた時にはいつでも僕の傍においでよ
お~ そう そう 僕の傍においで
お~ 僕の傍においで 僕の傍で 僕に寄り添うといいよ

當你有了麻煩,何不站在我這邊
哦~ 來 來 站在我身邊
哦~ 站在我身邊 站在我身邊 請站在我身邊


Darling, darling stand by me~
Stand by me
Oh stand by me, stand by me, stand by me~
大好きな 大好きな君 僕の傍においでよ~
僕の傍においで
お~ 僕の傍においで 僕の傍で 僕に寄り添うといいよ~

親愛的,親愛的請站在我身邊 ~
站在我身邊
哦~ 站在我身邊 站在我身邊 請站在我身邊~


(間奏)


And darling, darling stand by me
Oh, now, now, stand by me
Stand by me, stand by me…  
だから大好きな君 大好きな君 僕の傍においでよ
お~ さ~ さ~ 僕の傍においで
僕に寄り添って 僕の傍にいてね…

親愛的,親愛的請站在我身邊
哦~ 來 來 站在我身邊
站在我身邊 站在我身邊…




Stand By Me - John Lennon

What a wonderful world(この素晴らしき世界:多美好的世界)


 "What a Wonderful World" (この素晴らしき世界:多美好的世界)は、アメリカのジャズミュージシャンのルイ・アームストロング(Louis Armstrong, 1901年8月4日 - 1971年7月6日)が、1967年に発表した楽曲です。


 作詞・作曲は、G・ダグラス(音楽プロデューサーのボブ・シールのペンネーム)とジョージ・デヴィッド・ワイスの二人の共作とされています。


 歌詞の内容は、美しい自然の風景を詠じ、その中で語り合う人々や生まれ出ずる乳幼児の情景を描写して、この世界の素晴らしさを詠じたものです。 
 詞中には、木々の緑から始まり、バラの赤、青い空、白い雲、虹の七色など視覚に訴える色彩を豊富に盛り込み、更に人々の話し声や乳幼児の泣き声など聴覚をも刺激する詞語を書きこんで漢詩のような構成になっています。
 心和む佳作ですが、実はこの歌は反戦歌なのです。


 詞を書いたボブ・シールは、1965年からアメリカが本格介入を始めたベトナム戦争の成り行きに憂慮を抱いて、戦争に反対する立場からこの詞を書き上げました。
 直接的に反戦を表わす文言はありませんが、この世界の素晴らしさを詠ずる反対解釈として、世界を破壊する戦争の愚かさと、人びとの苦しみや悲しみを間接的に詠じています。
 「赤子が成長して自分よりも多くの事を学ぶだろう。」との1句は、言外に現在の大人の愚かさと、これから生まれ來る子供たちが今の大人よりも賢くなって戦争を抑止してくれることを望むものなのです。


 このように抽象的な反戦歌に仕上げたのは、楽曲を発表した1967年当時のアメリカ社会における黒人差別が原因となっています。
 1964年に「公民権法」が成立して、法の上では人種差別はなくなったことになってはいましたが、実態は連邦政府の法律が施行された3年前と何も変わらず公共施設の使用制限や就職差別などが各州ごとの法律の下に歴然として存在しました。
 白人のフォークシンガーであれば、あからさまな反戦歌を歌ったところで、政府に睨まれるだけのことでしたが、黒人が白人政権の政策に反するようなことを演唱したりすると命の危険がありました。
 その為、ボブ・シール自身は白人でしたが、アームストロングの身の安全を考えて、非常に婉曲な反戦歌にしたものです。


 時は下って20年後、1987年にベトナム戦争を題材にしたアメリカ映画『グッドモーニング, ベトナム』が製作された時には、戦時中の南ベトナムの牧歌的田園風景(正に「この素晴らしき世界」)の中で起きるゲリラ戦や空爆等戦場の現実を映すシーンのBGMとしてこの楽曲が使われています。


 「ベトナム」や「空爆」など戦争を表わす文言が書き込まれていないが故に、この楽曲は世界の普遍的な素晴らしさを詠ずるものとして何十年を経ても色褪せない古今の絶唱となっています。


 ルイ・アームストロングは、この曲を発表した4年後に69歳でこの世を去っています。
 その後この楽曲は、世界中で星の数ほど多くの歌手がカバーしていますが、アームストロングほどの幅と奥行きと深さを感じさせる演唱には遙かに及びません。
 今回は、50年前のルイ・アームストロング自身の原唱でご紹介します。


 なお、詞中に見える “How do you do?” の文言は、伊賀山人が使うようなやや古風な初対面の挨拶語ですが、友人同士が「初めまして」では変なので、文字通りに「どのように過ごしていますか(お変わりありませんか=お元気ですか)?」の意で訳しておきます。



 What a wonderful world
 この素晴らしき世界
 多美好的世界
                   Louis Armstrong
I see trees of green, red roses too.
I see them bloom, for me and you.
And I think to myself, what a wonderful world.
私には緑の木々が見える 赤いバラの花々も見える
それらは 私とあなたの為に咲いているように見える
そして私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと

我看到綠綠的樹,也看到紅紅的玫瑰
看著它們為你我綻放
而我不禁心想,多美好的世界啊


I see skies of blue, And clouds of white.
The bright blessed day, The dark sacred night.
And I think to myself, What a wonderful world.
私には青い空が見える そして白い雲も見える
耀き祝福された昼 昏く神聖な夜
そして私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと

我看到藍藍的天,也看到白白的雲
明亮幸福的白日,幽暗聖潔的夜晚
而我不禁心想,多美好的世界啊


The colors of the rainbow, So pretty in the sky.
Are also on the faces, Of people going by,
I see friends shaking hands. Saying, “How do you do?”
They’re really saying, “I love you”.
虹の色彩が とても見事に天空を彩る
更にまた通り過ぎる人々の 頭上を彩る
私には友人達が握手しているのが見える 「元気ですか?」と語りあいながら
また彼らは心から語りかけている 「君を愛しているよ。」と

彩虹的顏色,高掛天空多美麗
過往行人的臉上也有同樣美麗的色彩
我看到朋友們握手,互問「你好嗎?」
他們內心真正在說的是「我愛你」


I hear babies cry, I watch them grow,
They’ll learn much more, Than I’ll ever know.
And I think to myself, What a wonderful world.
私には赤子たちの泣き声が聞こえる 私は彼らの成長を見守る
彼らは今まで私が知り得たよりも更に多くの事を学ぶだろう 
そして私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと

我聽到嬰兒的哭聲,看著他們長大
他們將學會許多我從不知道的事物
而我不禁心想,多美好的世界啊


Yes, I think to myself, What a wonderful world!
そうさ 私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと!
而我不禁心想,多美好的世界啊!


Oh yeah…
お~ そうとも…
哦~ 耶…




WHAT A WONDERFUL WORLD (Louis Armstrong special movie) -LYRICS