伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居する隠者の戯言です。

伊賀の昔話


 昔、伊賀の里に一人の忍者が住んでおりました。
 ある吹雪の夜、伊賀山中での修行の帰り道で傷ついて弱っている一羽のツルを助けてやりました。
 翌朝、雪も止んだ頃、忍者の隠れ家に若くて美しい娘がやってきて「お嫁さんにしてください。」と言いました。独り者の忍者は、快く娘を中に入れてやりました。
 娘は、「私がよいと言うまで決して中を覗かないでくださいね。」と言い残して、隣の部屋にこもり、機を織り始めました。
 トントンカラリ、トンカラリ・・トントンカラリ、トンカラリ・・・と、機織りの音は三日三晩続きました。四日目の朝、音はピタッと止みましたが、娘との約束通り、忍者は決して中を覗こうとはしませんでした。
 五日たち、六日たち、一週間を過ぎるころには、さすがに忍者も心配になり、襖の敷居に竹筒の水を垂らして音のせぬようにして、そっと隙間を開けて中を覗いてみました。するとそこには娘の姿はなく、それどころかタンスや長持ち、先祖伝来の鎧兜や槍刀、唯一の道楽で長年集めてきた書画、骨董に至るまで部屋中の一切合財の調度品が消え失せていました。
 忍者は、びっくり仰天して叫びました。
 「しまった~!! あいつはツルじゃ~なかった! サギだったんだ~!!!」

浜の真砂は尽きるとも、世に詐欺人の種は尽きないようです。各位、ご用心ください。


伊賀の風土について

 伊賀は、四方を深緑の山に囲まれた盆地です。盆地の中には田畑が広がり、その間を縫うようにしていく筋かの渓流が流れています。水の中では小魚が群れ遊び、蘆の繁る川岸ではシラサギ、アオサギが羽を休めています。
 「住めば都」とは巷間よく言われますが、伊賀は何年住んでも田舎です。
 「伊賀は国のまほろば 立たなづく青垣 山ごもれる伊賀し麗し」 日本武尊が、もし伊賀の出身であったのならば、白鳥となって天に上る前にこのように詠じたかとも思わせる風光明媚な農山村です。
 高原の空は、あくまでも青く澄みきり、清流は空の色に染まり・・・と続けたいところですが、伊賀は今日も雨です。