伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居する隠者の戯言です。

行政書士無料相談会(名張市役所vs.当事務所)

 明日2月25日は、当事務所の所在する名張市主催の無料相談会があります。


 名張市では、行政書士による無料相談会を月1回開催しています。

 名張市民が対象で、1人1時間、1日6人限定の完全予約制です。

 結構、希望者が多く、抽選になることもあるそうです。

 因みに、来月の相談会は3月24日でその日は私が担当しますので、名張市内の方はふるってご応募ください。


 ご相談内容で、最も多いのは、相続手続きや遺言書作成に関することです。

 その程度のことなら、当事務所では、年中、1時間以内であれば無料でやっていますし、相談者のご要望に応じて出張相談も承っていますが、名張市ほどのお申し込みはありません。


 相談場所が役所でも事務所でも、回答する者は同一人ですので、回答内容そのものは全く同じですが、申し込みが市役所に集中するのは、知名度と競争原理とによるものと考えています。


 市役所主催となると、「お上のすることに間違いはないだろう。」と考える安心感があります。これに対し、聞いたこともない浜野総合事務所がしているとなると、いかにも胡散臭い。

 また、月1回6人限定と言われると、家電販売店の先着6名様限定のように競争原理が働きますが、当事務所のように年中やっていると有難味がありません。


 当事務所も営業活動として、知名度を上げるための方策を、このブログも含めていくつか実行していますが、なかなか思うような集客効果はありません。

 これからは、競争原理に基づくキャッチコピーを前面に押し出すのが有効ではないかと取り留めもなく考えています。


 例えば、


「先着6名様限定! 遺言書一式に香典袋3枚を付けて何とたったの〇〇円!! お電話は今すぐ・・・」


「先着ぅ~ 6人ならぁ~ ぅわ~ざ わざ 来てくれんでも~ え~のんや~ 電話ぁ~一本でぇ~ こっちからぁ~ 行~きまんがなぁ~」


 書いていて、自分でも馬鹿馬鹿しくなってきました。今夜はもう寝ます。(-_-)zzz

 

漢詩を作る(実践編)

    《春宵獨座吹笛麗人圖》


 それでは、前回に引き続き今回は、実際に五言絶句を正格の仄起式で一首作ってみましょう。

 たまたま、今日は、二十四節気の一つ「雨水」ですので、それに因んだものにします。

 詩の主題は、海の彼方の絶海の孤島で、たった一人で病と闘っている友人を力づけるものとします。


 五言絶句仄起式の基本公式は次のようになります。

 此処で、〇は平声、は仄声、◎は平韻を示します。


起句 〇〇 〇〇、(歌い起こし)

承句 〇〇 ◎。(起句の補足)

転句 〇〇 〇、(場面・発想の転換)

結句 〇〇 〇◎。(転句を受けると伴に、詩全体の主題を述べる)


 作詩前に、大まかな詩想を決めておきます。平仄に合う詩語を選んでいる内に詩想そのものが変化することもありますので、題名は、詩が完成してから付けることにします。


 作る順序は、どこからでも構いません。しかし、起句から始めるとだんだん使える漢字が少なくなって、一番重要な結句を作るのに一苦労します。私の場合は、殆ど結句から作ります。それも最後の三文字を最初に決めます。そうすることで、ここでは触れていませんが、正格・偏格が自動的に決まり、承句に使う韻字の種類も決まります。


 結句は、この詩全体を一貫するテーマの結論です。ここでは、雨水を迎え漸く春めいてきた自分の庭を眺めながら、南の島では既に多くの花が咲いていることだろうと想像して、療養中の友人には、その花を見て元気を出してもらいたいという思いを簡潔にまとめます。このとき、「元気を出せ。」と直接書いたのでは、要件を伝えるだけのメールと大差なく詩にはなりません。「多くの花が咲いているだろう。」と包括的かつ曖昧に述べるに留めたほうが余韻が残り、より詩情が深まります。


 結句の最後の三字には「百花開」を選びました。これで、韻は上平声「十灰」のグループに決まりです。その上の二字には「院落」を選びました。中庭という意味です。「中庭」とか「庭園」とかを使いたいところですが、それでは平仄が合いません。したがって、結句は「院落百花開」となります。


 転句は後回しにして、次に起句・承句で雨水を迎えた自分の庭のことを述べることにします。「雨水」は仄仄の並びなので、起句冒頭の二字に使うこととして、とりあえず、承句末の「十灰」に属する韻字を探します。「梅」があるのでこれを使うことにして、後は順次詩語を選んで承句は「東風綻白梅」に決定しました。「東風」は「春風」と同じ意味ですが、後で転句に「南海」が出てきたので、それと関連付けるため、敢えて「東風」に変更しました。「綻」は、花がほころぶという意味です。


 次に起句ですが、承句の「東風」と起句の「雨水」とは対をなす語ですので、ついでのことに起句は承句の対句になるように「雨水霑青柳」としてみました。「霑」は難しい漢字ですが、「湿」と同じ意味です。平仄の関係から止むを得ず採用しました。なお、ここの「雨水」は節気の雨水と本物の雨水とを掛けています。ちなみに対句とは、言葉の意味が相対しながら構文が揃って並んでいる二つの句のことを言いますが、四句からなる絶句では、対句を取る必要はありません。


 最後に転句ですが、前半で自分の庭の、ちまちました風景を詠み込みましたので、大きく発想を変えて、遥か遠くの南国にいる友人を思う心理を描写するため、「遙思南海島」としました。これにより、視線が足元から遥か遠くの海の彼方へと向かい、更に風景描写から心理描写へと発想が大きく変化します。


 題名は、雨水の節気に遠くにいる友人に贈るという意味で、「雨水寄故人」とします。


 これで以下の通り、全文が完成です。詩本文の20字を選ぶのにその10倍以上の漢字がエクセル画面上に散らばっています。ほぼ漢字の数だけ辞書も引いています。


 雨水寄故人


 雨水霑青柳
 東風綻白梅
 遙思南海島
 院落百花開


 訓読体は、次のとおりです。

 

雨水(うすい)、故人に寄(よ)す


雨水(うすい)は、青柳(せいりゅう)を霑(うるお)し、
東風(とうふう)は、白梅(はくばい)を綻(ほころば)す。
遙(はるか)に思う、南海の島、
院落(いんらく)に百花開くを。

 

 これで、一応完成です。推敲を続けていると次々に気になるところが出てきて収拾がつかなくなるので、このへんで見切りをつけます。


 ここまで我慢強く読み進んでこられた読者各位は、一つ疑問に思われることでしょう。


 「完成しても、結局は日本語の音読みや訓読みにするのなら、苦労して古代漢語発音の平仄に拘る必要などないのでは?」と。

 

 確かに、そのとおりなのです。近体詩というものは、千数百年前の唐人が当時の古漢語で声に出して読んでこそ、妙なる調べを奏でるものなのです。

 私のしていることは、生まれつき耳の聞こえない人が、音楽理論だけを頼りに作曲しているようなものなのです。


 しかしながら、詩に限らず、絵や書や器楽その他のあらゆる芸術も似たようなもので、傍から見れば単なる徒労に過ぎないでしょう。これを、とことん突き詰めると、人類は何故に存在するのかという究極の疑問に突き当たってしまうのです。


 本記事の冒頭、「麗人図」をご覧ください。

 この麗人は、誰かに聞かせるために笛を吹いているのではありません。自分自身の心を澄まし慰めるために、誰もいない閨房で唯一人吹いているのです。


 凡そ君子の楽しみというものは、そのようなものなのでしょう。


 ただ~ 麗人も、誰か聞いてくれる人がいれば、それはそれで嬉しいことでしょう。

 

 私の労作も、終生、本物の発音で聞くことができないのは、やはり少し悲しい・・・


  附言: 我欲您振作起精神來


漢詩を作る(理屈編)

《王子江作 杜牧「江南の春」詩意圖 NHKラジオテキストから引用》


 本格的に漢詩を作ろうとすると、少なくとも一冊の解説書と漢和辞典が必要となります。
 ここでは、ほんの概要のみをご紹介します。


 漢詩には、大きく分けて、古体詩、近体詩、新体詩の3種類があります。


 古体詩は、韻を踏むだけで他には余り厳格な決まりごとはありません。新体詩は、散文詩のようなもので、白話(話し言葉)で自由に作ることができます。私が主に取り組んでいるのは、最も厳格な約束事のある近体詩です。


 近体詩は、今から千数百年前の唐の時代に、それまで残されていた幾多の古体詩の形式を検討した結果、韻律やリズムなどが最も心地よく聞こえるような幾つかの形式に纏めて定めたものです。


 近体詩の主な約束事は、次の3点です。


1 「定型詩」であること
 1句が5言又は7言、1首が4句、8句又はそれ以上の偶数句からなること。更に各区の区切りは、2言・2言・3言(5言詩の場合は、2言・3言)であること。日本の和歌や俳句と似ていますが、字余り・字足らずの例外はありません。
 定型詩の種類ごとに名称が定められています。例えば、7言4句であれば七言絶句、5言8句であれば五言律詩と称します。


2 「押韻詩」であること
 定められた場所、通常は偶数句、場合によっては初句も含めた句の末尾の語尾に韻を踏む必要があります。漢詩に使われている漢字は約4万字あると言われていますがその全ては106の韻字に区分されています。「梅」、「開」など日本語の音読みでもある程度理解できますが、正確なことは漢和辞典を引いて確かめる必要があります。


3 「平仄」があること
 これが最もやっかいな決まり事です。
 漢字は1語1音(1音節)からなっています。日本語の音読みの振り仮名の数とは関係ありません。日本語の音は50音くらいしかありませんが、漢語では約400音あるとされています。それにしても総数約4万字の漢字に割り振ると、同音異義語が平均100字にもなり漢詩を音読する場合には支障をきたすことになってしまいます。これを少しでも緩和軽減するために漢語では、各音ごとに4種類の異なるアクセントを定めています。これを四声と言います。日本語で「雨」と「飴」とをアクセントで区別するようなものです。


 四声は、ノーアクセントの「平声」の他に、尻上がり、尻下がり、語尾がつまるなどのアクセントがある「上声」「去声」「入声」があります。「平声」以外のアクセントのある三声をまとめて「仄声」といいます。これらは、全て漢和辞典で確認することができます。
 漢詩では、この「平声」と「仄声」の配置が、詩の種類ごとに厳格に決められています。これを平仄式といいます。
 この平仄式に従うことにより、唐代の漢人が聞いたとしたら、天にも昇るかのような心地よい響きとリズムが得られるのです。音楽でいえば、既に曲ができているようなものです。後は、その曲に合った詩語を選んでパズルのように当てはめるだけのことです。



 以上の他にも、更に上乗せ規則として「同字重出を避ける」や「和臭を忌む」などがあり、逆に緩和規定として「一三五不論」などがありますが、ここでは割愛します。


 それでは、作例として、最も字数の少ない五言絶句を取り上げてみます。


 これは、一句五言、全四句の20字からなります。各句を初句から、起句、承句、転句、結句といいます。各句の性格は次のとおりです。


 起句は、歌い起しで感動の背景を述べます。
 承句は、起句の内容の補足又は説明になります。
 転句は、近くから遠くへ、叙景から抒情へのように、場面・発想を転換します。
 結句は、転句を受けるとともに、詩全体を通した主題つまり結論を述べるもので、最も重要な句です。


 同じ五言絶句でも、その平仄式の違いにより、正格、偏格、更にはそれらの変形の不粘格などがありますが、次回は、その代表として、五言絶句正格(仄起式)の作例をご紹介します。


   次回へ続く・・・