伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

カラテ対クマ

【伊賀山中での自然石割り風景】


 今は昔、日本空手協会を創設された中山正敏首席師範から空手の手ほどきを受けました。それから既に半世紀、今でも私は修行を続けています。


 いつの頃か自然石をも手刀の一撃で割ることができるようになりました。そして、この石割の技を使えばクマと戦っても勝てるような気がしてきました。


 無益な争いは空手家の望むところではありませんが、しばしば在所に降りてきて人畜に被害を及ぼすクマを見過ごすことは空手家の良心が許しません。


 「拙者とて空手家の端くれ。空手家の面目にかけてクマを倒す!」
と、決意を固めて伊賀山中に分け入りました。


 ところが、しばしば山里を徘徊するクマですが、いざ山の中で探すとなると、なかなか見つかるものではありません。
 日も傾き始めたころ、漸く、山頂付近の山小屋で一頭のクマを発見しました。空手家はクマに駆け寄り叫びました。 


 「この狼藉者め! 必殺石割りの秘技を受けてみよ!」


 空手家は「打倒クマ!」に燃えていたのですが、クマの方は「打倒カラテ!」に燃えてはいなかったようで、勝負にはなりませんでした。


【伊賀山中で発見したクマ】


追記: 試合の申し込みはお断りします。私が修行しているのは、あくまでも武術としての実戦空手です。一旦、義を見て立つ秋には、命のやり取りを伴う果し合いになってしまいます。一定のルールの下で限られた技を競うスポーツ空手に興味はありません。