往昔懐古
親の遺品を整理していると、昔の写真や絵葉書が数多く出てきます。
経済的価値はありませんが、親族の生前に思いを致すとなかなか捨て難く未だに保管しています。
終戦記念日を前にして、今回はその中の一部をご紹介します。
【入営挨拶状】
今から丁度80年前の1937年(昭和12年)7月、盧溝橋事件を発端として支那事変が勃発しました。
この葉書は、当時の兵役法.に基づく戦時召集に応じて、岡山から出征して広島の陸軍に到着した伊賀山人の伯父(父の長兄)が知人に書き送るために作った入営の挨拶状です。
絵葉書を使用し謄写版で印刷したもので、十数枚が使われずに残っています。
文面は、「只今無事廣島の地に安着しました。出發に当りましての御芳情を今更の如く想ひ愈々一死殉國の決意を固めてゐます 先は御挨拶まで!!」と書かれており、当時の時代の空気を感じさせます。
なお、文面の漢字は「縣」「廣」「發」など全て正字体を使っていますが、自分の名前の「濱」だけを略字の「浜」で書いているのが不思議です。
サインの一種のような意識だったのかもしれません。
以下、絵葉書の表面をご紹介します。
【熱田神宮】
愛知県名古屋市にある熱田神宮の全景です。
「吉田初三郎畫伯筆」と注記されています。
【三條大橋】
京都名勝の三条大橋です。
【鳥羽風景】
三重県鳥羽湾の風景です。
当時は、まだ米英とは戦争を始めていませんので、欧米からの観光客向けに説明文の左半分は英語で書かれています。
【安藝の宮島】
広島県の名勝「安芸の宮島」です。
「緑陰に潮の香ゆかしき大元公園の淸趣」と書かれており、今どきの若者には意味不明かもしれません。
なお、この絵葉書の写真は、一見カラー写真のように見えますが、実は白黒写真に彩色したものです。
【出雲大社拝殿】
島根県の出雲大社の拝殿です。
「亀山の朝霞はちり 軟かい朝の光に神威と自然の融合をみる」との日本語の説明文と英訳が書かれています。
【京城の「百貨の殿堂三越デパートメント・ストア」】
当時、大日本帝国の一部であった朝鮮の京城(現:ソウル)に有った三越百貨店。
幟旗には、「國民精神總動員 愛馬の日」「第三十回記念植樹」「一億一心」と書かれており、時代を感じさせます。
【支那事變従軍記章】
支那事変に従軍した者とその要務に関係した者に授与された記章です。
記章の表には、菊花御紋章の下に八咫烏と瑞雲、それを支えるように交叉した陸軍旗と海軍旗が配されています。
この記章は、あくまでも従軍を顕彰するだけのもので、恩給などの特典は一切ありません。
しかしながら、大東亜戦争敗戦に伴い大東亜戦争従軍記章と共に失効してしまいました。
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