伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

抜根(ばっこん)

 【抜根した切り株】


 抜根(ばっこん)とは、立木(りゅうぼく)を伐採した跡に残された根株を取り除くことを言います。
 昨日、山の神のご託宣により、自宅に残されていたグミの枯れ木の抜根を行いました。
 枯れ木とはいえ、樹齢20年で、その根は数十本もあり、地下深く伸びています。


 機械力を持たぬ伊賀山人としては、シャベルやツルハシだけで掘り起こすので、なかなか容易なことではありません。
 切り株の周囲をシャベルで掘り、根を一本一本切断することから始めました。
 周囲の根は比較的簡単に切れましたが、切り株の直下にはツルハシが届かぬため、悪戦苦闘すること30分、ようやく切り株がぐらつき始め、もうそろそろ抜けるぞという頃になって、山の神が姿を現しました。


 「まだ抜けへんの~ そんなもん、ちょっと引っ張ればすぐ抜けるわ~」
と言いながら、切り株の上端を掴んで全体重をかけたところ、メリメリッと音を立てて、あっけなく抜けてしまいました。


 もう既に誰が引っ張っても抜ける状態にあった切り株ですが、武道家伊賀山人は決して負け惜しみを言いません。


 早速、最近メタボ気味になっている山の神を褒めてやりました。
 『う~む、やはり体重やな~』


 ところが、山の神は礼を言うどころか反論してきます。
 「違う! ちょっとした努力や~」


 仕方なく、更に褒めてやりました。
 『う~む、体重は人を裏切らないな~』


 すると、山の神が利いた風な口をききます。 
 「違う! テコの原理を応用したんや~ 私は天才なんや~」
 
 ついでに、この天才も褒めてやりました。
 『う~む、体重に勝る天才は無いな~』


 山の神は、いつもの意味不明な捨て台詞を残して、玄関の奥に消えて行きました。
 「ほんまに、アレやわ~」


 抜根した後には、新たに紫陽花が植えられました。
 陽光燦々と降り注ぐ、真夏を思わせるほど暑い秋の日の出来事でした。


やって見せ 言って聞かせてさせてみて 褒めてやらねば人は動かじ…山本五十六遺訓より