伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

我期待【張雨生版】(我が期待)


 《我期待》は、台湾のシンガーソングライター張雨生(チャン・ユーシャン、英名:Tom Chang 1966年6月7日 - 1997年11月12日)が1994年9月5日に発表したアルバム《卡拉OK Live‧台北·我(カラオケ ライブ・台北・私)》に収録されている楽曲です。
 張雨生は当時28歳でしたが、音楽に掛けては稀有な才能を持つ人で、このアルバムでは収録全曲の作詞・作曲、そしてプロデュースの全ての作業を自分で行い、自身のライブバンドで演奏しています。
 そして「高音王子」と謳われた独特の高音で歌い上げて、特徴的で魅力溢れる作品を作ることに成功しています。


 彼は、音楽プロデューサーとしても活躍して、張 惠妹(チャン・ホェイメイ)など新人歌手の発掘にも尽力していますが、このアルバム発表の3年後、交通事故により31歳の若さで世を去っています。


 《我期待》は、発表から14年後の2008年に公開された台湾映画『九降風(九月に吹き降ろす風)」では、エンディングテーマ曲として使用されています。
 『九降風』とは、台灣の新竹市で旧暦の9月に山から吹き降ろす季節風のことをいいます。
 この時期、台湾では卒業や入学のシーズンと重なることもあり、『九降風』が日本の『桜』のように青春の新たな旅立ちと別れを象徴する代名詞ともなっています。


 《我期待》の歌詞は、旅立ちの日を迎えた青年の将来への期待を詠じたものです。
 この青年は、まずは別れにあたって生まれ故郷への思いを詠じて歌い起しますが、それに続く各句は全て現在から未来へ向かっての抱負を述べ、結句で旅立ちにあたって一抹の後悔もなく堂々と進んでゆくという気概を詠じて結んでいます。
 なお、詞中の「期待」という詞語は、日本語とほぼ同義ですが漢語では「楽しみにしている」というニュアンスの強い語です。


 日本では今どき殆ど聞く人もなく作られることもない青春歌謡、台灣で23年前に発表された「高音王子」の音源でご紹介します。



 我期待
 我が期待
             作詞・作曲・演唱:張雨生   


我期待 有一天我會回來 
回到我最初的愛 回到童貞的神采 
我期待 有一天我會明白 
明白人世的至愛 明白原始的情懷 
我情願 分合的無奈 能換來 春夜的天籟
我情願 現在與未來 能充滿 秋涼的爽快
SAY GOODBYE  SAY GOODBYE
前前後後 迂迂迴迴地試探
SAY GOODBYE  SAY GOODBYE
昂首闊步 不留一絲遺憾

私は期待している いつの日にか帰って來ることを
私が一番最初に愛した人の元に戻り 子供のように天真爛漫な心に戻れることを
私は期待している いつの日にか理解できることを
人の世の至高の愛を理解し 人の穢れなき気持ちを理解できることを
私は心から願う 出会いと別れの虚しささえも 春の夜の自然の音色に変えられることを
私は心から願う 現在と未来が 秋の日の爽やかさで満たされることを
さらば… さらばと言おう
行きつ戻りつ 遠回りになろうとも手探りしながら進んで行こう

らば… さらばと言おう
頭を上げて堂々と歩き出そう 微塵も後悔を残すことなく


SAY GOODBYE  SAY GOODBYE
前前後後 迂迂迴迴地試探
SAY GOODBYE  SAY GOODBYE
昂首闊步 不留一絲遺~憾~

さらば… さらばと言おう
行きつ戻りつ 遠回りになろうとも手探りしながら進んで行こう

さらば… さらばと言おう
頭を上げて堂々と歩き出そう 微塵も後悔を残すことなく




張雨生 Tom Chang - 我期待 (official 官方完整版MV)


 追記:

 本歌詞の初めの方の「回到我最初的愛 回到童貞的神采」とある対句は、逐語訳すると「私の最初の愛に戻り、子供の精神と風采に戻る。」ということになりますが、文脈上ここでは張雨生が故郷澎湖島を離れるときに、自身が生まれて最初に愛し愛された母親の張惠美を意識したものと解釈して訳しています。



 阿妹こと張惠妹のカバー版はこちら↓