伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

伊賀の作り話

 昔、昔、伊賀の里に一人の欲張りな忍者が住んでおりました。


 本業だけでは満足せず、何か楽して儲かる副業はないかと、得意の情報網を駆使してググっていたところ、ツルが自分の羽を抜いて機(はた)を織り、高級反物を作るという貴重な情報を手に入れました。


 「しめしめ、これで一儲けできるぞ」と「捕らぬ狸の皮算用」ならぬ「捕らぬツルの羽算用」を決め込んだこの忍者、早速、鳥を捕まえてきて、自分の隣の部屋に放り込み「おい、機を織れ」と言いつけました。
 ところが、機織りの音は聞こえないのに、部屋の中がやたらと騒々しい。
 そこで、覗いてみると荷造りをしておりました。
 ツルではなくペリカンだったのですね~


 また鳥を捕まえてきて部屋に放り込み「おい、機を織れ」と言いつけました。
 ところが、今度は部屋ではなく、その上の屋根の方がめっぽう騒々しい。
 よく見たら、ツルではなくトビだったんですね~


 また鳥を捕まえてきて部屋に放り込み「おい、機を織れ」と言いつけました。
 すると、今度は逆にやたら静かで物音ひとつしません。
 覗いてみると、何と死んでいました。
 ツルではなくガンだったんですね~ 


 また鳥を捕まえてきて部屋に放り込み「おい、機を織れ」と言いつけました。
 今度は、最初こそ機織りの音がしていましたが、やがて静かになりました。
 覗いてみると、家財道具が全て持ち逃げされていました。
 ツルではなくサギだったんですね~


 すっかり腹を立てたこの忍者、今度は2羽まとめて捕まえてきて部屋に放り込み「おい、機を織れ」と言いつけました。
 すると今度は、鳥だけではなく、女房・子供にまで逃げられてしまいました。
 ツルではなく若いツバメとコウノトリだったんですね~


 え~何ですか~?
 ツルとほかの鳥との見分けがつかぬはずがないだろうって?


 実は、この忍者、欲に目がくらんでいたんですね~


 お後がよろしいようで…