伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

What a wonderful world(この素晴らしき世界:多美好的世界)


 "What a Wonderful World" (この素晴らしき世界:多美好的世界)は、アメリカのジャズミュージシャンのルイ・アームストロング(Louis Armstrong, 1901年8月4日 - 1971年7月6日)が、1967年に発表した楽曲です。


 作詞・作曲は、G・ダグラス(音楽プロデューサーのボブ・シールのペンネーム)とジョージ・デヴィッド・ワイスの二人の共作とされています。


 歌詞の内容は、美しい自然の風景を詠じ、その中で語り合う人々や生まれ出ずる乳幼児の情景を描写して、この世界の素晴らしさを詠じたものです。 
 詞中には、木々の緑から始まり、バラの赤、青い空、白い雲、虹の七色など視覚に訴える色彩を豊富に盛り込み、更に人々の話し声や乳幼児の泣き声など聴覚をも刺激する詞語を書きこんで漢詩のような構成になっています。
 心和む佳作ですが、実はこの歌は反戦歌なのです。


 詞を書いたボブ・シールは、1965年からアメリカが本格介入を始めたベトナム戦争の成り行きに憂慮を抱いて、戦争に反対する立場からこの詞を書き上げました。
 直接的に反戦を表わす文言はありませんが、この世界の素晴らしさを詠ずる反対解釈として、世界を破壊する戦争の愚かさと、人びとの苦しみや悲しみを間接的に詠じています。
 「赤子が成長して自分よりも多くの事を学ぶだろう。」との1句は、言外に現在の大人の愚かさと、これから生まれ來る子供たちが今の大人よりも賢くなって戦争を抑止してくれることを望むものなのです。


 このように抽象的な反戦歌に仕上げたのは、楽曲を発表した1967年当時のアメリカ社会における黒人差別が原因となっています。
 1964年に「公民権法」が成立して、法の上では人種差別はなくなったことになってはいましたが、実態は連邦政府の法律が施行された3年前と何も変わらず公共施設の使用制限や就職差別などが各州ごとの法律の下に歴然として存在しました。
 白人のフォークシンガーであれば、あからさまな反戦歌を歌ったところで、政府に睨まれるだけのことでしたが、黒人が白人政権の政策に反するようなことを演唱したりすると命の危険がありました。
 その為、ボブ・シール自身は白人でしたが、アームストロングの身の安全を考えて、非常に婉曲な反戦歌にしたものです。


 時は下って20年後、1987年にベトナム戦争を題材にしたアメリカ映画『グッドモーニング, ベトナム』が製作された時には、戦時中の南ベトナムの牧歌的田園風景(正に「この素晴らしき世界」)の中で起きるゲリラ戦や空爆等戦場の現実を映すシーンのBGMとしてこの楽曲が使われています。


 「ベトナム」や「空爆」など戦争を表わす文言が書き込まれていないが故に、この楽曲は世界の普遍的な素晴らしさを詠ずるものとして何十年を経ても色褪せない古今の絶唱となっています。


 ルイ・アームストロングは、この曲を発表した4年後に69歳でこの世を去っています。
 その後この楽曲は、世界中で星の数ほど多くの歌手がカバーしていますが、アームストロングほどの幅と奥行きと深さを感じさせる演唱には遙かに及びません。
 今回は、50年前のルイ・アームストロング自身の原唱でご紹介します。


 なお、詞中に見える “How do you do?” の文言は、伊賀山人が使うようなやや古風な初対面の挨拶語ですが、友人同士が「初めまして」では変なので、文字通りに「どのように過ごしていますか(お変わりありませんか=お元気ですか)?」の意で訳しておきます。



 What a wonderful world
 この素晴らしき世界
 多美好的世界
                   Louis Armstrong
I see trees of green, red roses too.
I see them bloom, for me and you.
And I think to myself, what a wonderful world.
私には緑の木々が見える 赤いバラの花々も見える
それらは 私とあなたの為に咲いているように見える
そして私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと

我看到綠綠的樹,也看到紅紅的玫瑰
看著它們為你我綻放
而我不禁心想,多美好的世界啊


I see skies of blue, And clouds of white.
The bright blessed day, The dark sacred night.
And I think to myself, What a wonderful world.
私には青い空が見える そして白い雲も見える
耀き祝福された昼 昏く神聖な夜
そして私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと

我看到藍藍的天,也看到白白的雲
明亮幸福的白日,幽暗聖潔的夜晚
而我不禁心想,多美好的世界啊


The colors of the rainbow, So pretty in the sky.
Are also on the faces, Of people going by,
I see friends shaking hands. Saying, “How do you do?”
They’re really saying, “I love you”.
虹の色彩が とても見事に天空を彩る
更にまた通り過ぎる人々の 頭上を彩る
私には友人達が握手しているのが見える 「元気ですか?」と語りあいながら
また彼らは心から語りかけている 「君を愛しているよ。」と

彩虹的顏色,高掛天空多美麗
過往行人的臉上也有同樣美麗的色彩
我看到朋友們握手,互問「你好嗎?」
他們內心真正在說的是「我愛你」


I hear babies cry, I watch them grow,
They’ll learn much more, Than I’ll ever know.
And I think to myself, What a wonderful world.
私には赤子たちの泣き声が聞こえる 私は彼らの成長を見守る
彼らは今まで私が知り得たよりも更に多くの事を学ぶだろう 
そして私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと

我聽到嬰兒的哭聲,看著他們長大
他們將學會許多我從不知道的事物
而我不禁心想,多美好的世界啊


Yes, I think to myself, What a wonderful world!
そうさ 私は心ひそかに思っている 何と素晴らしい世界なのだろうかと!
而我不禁心想,多美好的世界啊!


Oh yeah…
お~ そうとも…
哦~ 耶…





Louis Armstrong What A Wonderful World



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