伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

君在前哨(君は前哨に在り)


 5月9日のライブドアニュースによると、コロナ禍中の現在、全国的に「自粛警察」なるものが跋扈(ばっこ)しているそうです。
 以下、ニュースを引用し伊賀山人の所見を述べて、医療の第一線で生命の危険と隣り合わせで戦う医療者に「君在前哨(君は前哨に在り)」の曲と共に感謝の意を捧げます。


(5月9日ライブドアニュース本文)


 コロナ禍の現在、“自粛警察”と呼ばれる存在が目を光らせている。緊急事態宣言が延長され、政府や自治体からの自粛要請が続くなか、外出している人を非難して吊るし上げたり、営業している店舗に貼り紙をして警告したりするなど、その実態をテレビなどのメディアがこぞって報じている。


 対岸の火事のごとく「ヒマな奴がいるもんだ」などと見ている人も多いだろうが、実際に遭遇してみると、とてつもない恐怖を感じるのだという。


◆エスカレートする“自粛警察”の取り締まり


「私は感染症病棟に看護師として勤務しています。3月の終わり頃から、病院の寮に泊まって勤務するようになり、自宅に帰るのは週末1日だけ。その日も勤務を終えて、1週間分の着替えなどをキャリーバッグにつめて、電車で自宅に帰っていたんですが……」

 看護師の木本さやかさん(仮名・20代)は、東京都内の新型コロナウイルス感染患者を受け入れる病棟に勤めており、最前線で戦っている最中だ。ほぼ休みなく働き、1週間の勤務を終えれば自宅に帰り、掃除や洗濯をしてまた病院に戻るというハードな日々を送る。そんな木本さんに追い討ちをかけたのは“自粛警察”だった。


「電車に乗っていると、向かいに座っている中年女性二人組が私を見てヒソヒソ話をしていたんです。あまりにもあからさまだから、『どうかしましたか?』と聞くと『若いからって旅行なんかに行って』とか『人の迷惑を考えたらどう』って。『旅行ではなく仕事です』と伝えても反論されて。


 医療関係者です、と喉元まで出かかりましたが、今度は差別されるかも知れないと思い、逃げるように電車をおりました。ギリギリ限界のところでなんとか頑張っているのに、あんまりです」(木本さん)


(ライブドアニュース2020年5月9日 8時54分 日刊SPA!  から引用) 


 現在、コロナ感染症医療に従事する医療者の置かれた環境は、正に兵士が置かれた戦場の最前線と同じです。
 医療者が任務に邁進する原動力は、職務遂行の「使命感」と「士気」です。
 そのいづれが欠けても医療は崩壊します。


 この記事に見える、中年女2人の言動は、戦場に立つ木本看護師の足を引っ張り「士気」を喪失させかねない悪辣な行為なのです。


 この中年女は、短絡的発想により重き荷を負う者は全て旅行者だと思い込むとともに、聞きかじりの知識に基づきすべての旅行を禁止すればコロナは片付くと考えて、根拠のない自分勝手な正義感により木本看護師を非難しているのでしょう。


 他にも、「自粛警察」なるものが、県外移動禁止とする知事の要請を曲解して、介護現場を増援するため遙々他府県から来訪した介護士の車に傷をつけたことなども聞き及びます。


 曾て、浅はかな自己顕示欲に駆られ、福島原発の事故処理を妨害して被害を拡大した国賊管直人のような市民運動家レベルの低劣な正義感は百害あって一利ありません。


 重い荷物を持っている者、他府県ナンバーを付けている車の持ち主、彼ら彼女らの全てが不要不急の旅行をしているわけではありません。


 その程度の想像力も持ち合わせない輩が、根拠のない正義を振り回すのは罪悪です。
 暇つぶしの「自粛警察」活動など今すぐ止めて、近所の病院に赴いて病棟の清掃でもしたほうが余程、コロナウイルス撲滅に効果があるでしょう。





 「君在前哨(君は前哨に在り)」は、東洋の歌姫と称された台灣の歌手;鄧麗君(1953年1月29日-1995年5月8日)が、1981年8月から軍の基地を慰問するときに演唱するために発表した楽曲です。
 鄧麗君は、父親が中華民國軍の軍人であったこともあり、デビュー当時から軍隊の慰問に意を注ぎ、台灣行政院新聞局から「愛国芸人」メダルを受賞するとともに、「軍の永遠の恋人」とも称されていました。


 この楽曲の歌題に見える「前哨」(out post:OP)とは、防御の為の「戦闘陣地の前縁」(foward edge of battle area:FEBA)の更に前方に展開して最も早く敵と接触し、敵の近接を早期に警告して主力に準備の余裕を与えるという非常に危険な任務を遂行する部隊或いは陣地のことです。
 動画では、「前哨」を「frontline:FL」(前線)と英訳していますが、「前線」は広義には「前哨」を含む概念ですが、一般には「FEBA」に配置される部隊或いは地域を意味します。「前哨」とは、更にその前方に位置する援護・警戒部隊です。


 軍人も医療者も国民を保護するという任務は同じです。
 現在コロナウイルスと戦っている医療者も、ある意味、戦場の前哨に在るともいえるでしょう。


 なお、この楽曲の作詞は爾英、 作曲は古月と表示されていますが、これはどちらも台灣の音楽家;左宏元(1930年-)のペンネームで同一人物です。


 短い歌詞の中に、前哨で勤務する戦士に感謝の意を表すものになっています。
:


君在前哨
君は前哨に在り
              作詞:爾英 作曲:古月 演唱:鄧麗君


今天我把懷念送給你 *1
謝謝你把溫暖送給我

我有了你在前哨保護我
爲國家 我會更珍惜我
 
有時我會問白雲
有時我也託藍天 

向你 問好

今日 私はあなたを懐かしむ思いを送ります
ありがとう あなたが私に温もりを送ってくれること
私には前哨にいて私を護ってくれるあなたが居る
国家の為に 私は必ず自分を大切にします
時には私は白い雲に問いかけます
時には私は青い空にお願いします 

あなたによろしく伝えてと


今天我把懷念送給你
謝謝你把溫暖送給我
我有了你在前哨保護我
爲了你 我會更珍惜我
 *2
今日 私はあなたを懐かしむ思いを送ります
ありがとう あなたが私に温もりを送ってくれること
私には前哨にいて私を護ってくれるあなたが居る
あなたの為に 私は必ず自分を大切にします



(間奏)


*1~*2再唱





鄧麗君 君在前哨(正確)