伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

「トッパ」という名の悪徳プロバイダー

 22日20時ころ、事務所に、ある業者の女から次のような電話がありました。
「いつもOCNをご利用いただき有難うございます。今日は、NTTご契約者様へのOCNの大切なお知らせです。」
 これだけ聞くと、NTT関連企業のOCNからの電話かと勘違いしてしまいます。
 ただし、ボイスレコーダーを確認すると、OCN「からの」大切なお知らせとは言わず、OCN「の」大切なお知らせと言っているところがミソです。


女は、台本棒読み口調で続けます。
「このたび、NTTのIPバージョンが4から6に変更になります。今までの4は使えなくなるので、早急に6に変更が必要です。今なら無料でバージョンアップできます。手続きは10分後に別の担当者から電話で説明しますので、それまでにOCNとの契約書を用意しておいてください。」


 この時点で、怪しいことに気づきます。
 そんな大事なことを、夜中に電話で説明するのか?
 OCNとの契約書は、当然OCNも持っているはずなのに用意する必要があるのか?
 この女の台本棒読み口調も怪しい。


 約10分後に別の男から電話があり、
「OCNのバージョン4は使えなくなる。OCNはバージョン6を設定しないので、バージョン6にするためにはトッパに変更する必要がある。」
などと妙なことを言いだします。ネット事情に暗い小職としては、「トッパ」という言葉を聞いたこともないので、OCNの新しいサービスの一つかと思って問いただしたところ、OCNとは別のプロバイダーの名称とのことでした。


『OCNが使えなくなるのであれば、OCNから説明があるのが筋であり、それまでプロバイダーを変更するつもりはない。』
と答えると、


「このままでは、ネットは使えなくなりますよ!それでもいいのですか!!」
と、殆ど脅迫です。


このような、振り込め詐欺まがいの者を相手にしている時間がもったいないので、
『構いません。当方としては・・・』
と、断りの言葉を続けている最中に、挨拶もなくいきなり電話を切られました。


 この「トッパ」という名のプロバイダーあるいはそこの社員の手口は、虚偽の説明により事実を誤認させて人を欺罔する詐欺行為です。
 クーリングオフは、基本的に自営業者には適用されませんので、当事務所も様々な業者から狙われますが、今回は女と男の二人が登場する劇場型の詐欺でした。


 業者の実名を挙げて詐欺であると指摘する以上、当然、当事務所には詐欺未遂で告訴できるだけの証拠を保存しています。
 なお、OCNにも確認しましたが、将来的にはバージョンアップする計画もあるが、当面は現状どおりであり、また、どのようなバージョンになろうともお客様がOCNを使えなくなることなど未来永劫ありえないとの回答でした。この回答もトッパの欺罔を立証する有力な証拠となります。



後日談:
 既に1年を経過した2016年11月2日現在、IPバージョンが6になったのか8になったのかはあずかり知りませんが、電話もインターネットも何の問題もなく使用できています。
 この間、詐欺未遂のトッパからは何の連絡もありません。
 当事務所としても、実害がなかったこともあり、告訴には及ばず放置しています。

伊賀のくノ一

   伊賀のくノ一
 (筆者注:文中、個人名は匿名にしていますので、適宜ご想像ください。)   

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 かつて、杜の都仙台のアパートで独り暮らしをしていたころのことです。


 久しぶりに、伊賀の山奥から山の神が訪ねてきました。


 アパートに入るや否や、床にホコリが溜まっているとか風呂にカビがわいているとか、文句たらたらで大掃除が始まりました。


 ほどなく、この山の神、ホウキを片手に台所で暴れ出しました。伊賀のくノ一の真似をしてチャンバラの稽古でもしているのかと思って覗いてみると、何の罪もないゴキブリを追いかけまわしています。


 私は、この哀れなゴキブリのために一肌脱ぐことにしました。
「これこれ、無益な殺生はおやめなさい。生きとし生ける者、ゴキブリにも生きる権利がある。」


 ところが、このくノ一、命の大切さなど眼中にありません。
『ゴキブリに生きる権利なんかない~!』


 私は、ゴキブリの弁護を続けました。
「いやいや、ゴキブリを差別してはいけないよ。全てゴキブリは昆虫として尊重される。全てゴキブリは法の下(もと)に平等であり、ゴキブリの幸福を追求する権利は何人(なんぴと)もこれを侵してはならないのだ。」


 しかしながら、法の理念を全く理解しないこのくノ一は、ヒステリックに喚き散らしました。
『何ゴチャゴチャ言うてんねん! 
 ゴキブリなんか~尊重されへん!
 ゴキブリなんか~人類の敵や~! 
 ゴキブリなんか~! 
 ゴキブリなんか~!! 
 金正〇と同んなじや~!!!』
と、このくノ一、とんでもないことを言いだしました。


 私は、名誉棄損などで訴えられないように、火消し役に回りました。
「おいおい、それは失礼と言うものだよ。金正〇と同じなんて、ゴキブリが聞いたら気を悪くするぞ。」


 そうこうしている内に、気を悪くしたゴキブリは台所の隅に逃げ込み姿を消しました。
 これを取り逃がしたくノ一は、己の技の未熟を恥じてか、再修業のため伊賀の山に帰って行きました。


 杜の都に、平和と静寂が戻ってきました。
 爾来、ゴキブリは姿を現しません。
 若い娘の姿に身を変えて、恩返しに来るのではないかと期待していたのですが・・・