伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

主人公


 『主人公』は、1978年(昭和53年)3月25日、シンガーソングライターさだまさしが発表したアルバム『私花集』(アンソロジィ)のB面第5曲、即ち最後の曲として発表された楽曲です。


 この曲は、発表以来、テレビやラジオの企画で行われるファンの人気投票では、「関白宣言」などの数あるヒット曲を抑えて、常に第1位を続けている人気曲です。


 さだ自身は、「『自分の人生は自分が主人公』というごく当たり前のことを歌っているだけなのですが、それが落ち込んだ気持ちになった時や自分に自信が持てない時の応援歌として受け入れられているのではないでしょうか。」と分析しています。
 ただし、この曲はアルバムの最後に収録されていることから分かる*ように、さだ自身は「『主人公』より出来の良い歌も作っているはずなんだけど…」と語り、作り手と受け手との齟齬を感じて、エンターテイナーとしては嬉しいもののアーティストとしては心中複雑なものがあるようです。

*筆者注:

 当時のレコードは、円盤の外側から円周上の録音溝を針がなぞって再生される仕組みで、後の方に収録された内側になる曲は録音溝(円周)が短くなることにより音質が落ちるため、A面・B面共に作者の自信作は通常、外側になる始めの方に収録した。


 なお、歌詩にはさだが当時憧れていたパリ(実際に行ったら失望したらしい)を思わせるフレーズを織り込んだとする説もありますが、「地下鉄の駅前の『62』番のバス」は、パリだけではなく、東京や北海道の旭川にもありますので、真相は不明です。


  人は誰しも、進学、就職、恋愛、結婚等々、人生の節目に於いて、大きな選択を迫られます。そして、その都度いつも必ず正しい選択をしているとは限りません。


 この詩は、過去の自分の選択に迷いを持つ主人公が、未練を残しつつも過去と決別して、精一杯生きようとする決意を詠じたものです。



    
    主人公       
    主角
              作詩・作曲・歌唱:さだまさし


  時には 思い出ゆきの 旅行案内書(ガイドブック)にまかせ
  「あの頃」という名の駅で降りて 「昔通り」を歩く
  いつもの喫茶(テラス)には まだ時の名残が少し

  
時候打敗前往回憶的 旅行嚮導書(旅遊指南書)
  在「那個時候」的名的車站下來走「昔日街路」
  總是來往的咖啡店(涼台) 還時候的惜別稍微


  地下鉄(メトロ)の駅の前には 「62番」のバス
  鈴懸(プラタナス)並木の古い広場と 学生だらけの街
  そういえばあなたの服の 模様さえ覚えてる
  
在地鐵(地鐵)的車站前「62號」的巴士
  鈴懸(懸鈴木)街道樹舊的廣場和淨是學生的街

  那麼說來記著連 你的衣服的花樣


   あなたの眩しい笑顔と 友達の笑い声に
   抱かれて私はいつでも 必ずきらめいていた
   
你的晃眼的笑容和朋友的向笑聲
   被抱我無論什麼時候必定閃耀


  「或いは」「もしも」だなんて あなたは嫌ったけど
  時を遡る切符(チケット)があれば 欲しくなる時がある
  あそこの別れ道で 選びなおせるならって……
  
「或者」是「假使」之類你討厭,不過
  如果有追溯時候的票(票) 變得想要時有

  想在從前的那個岔道,選擇如果就能弄好……


  勿論 今の私を 悲しむつもりはない
  確かに自分で選んだ以上 精一杯生きる
  そうでなきゃ あなたにとても とてもはずかしいから
  
不想當然悲傷現在的我
  確實自己既然選擇竭盡全力活
  如果是不那樣 因為對你非常 非常害羞所以。


   あなたは教えてくれた 小さな物語でも
   自分の人生の中では 誰もがみな主人公
   時折思い出の中で あなたは支えてください
   私の人生の中では 私が主人公だと
   
你在告訴的 小故事也
   在自己的人生中 誰都全部主人公
   有時在回憶中 你請支撐我
   在我的人生中 我是主人公




主人公 さだまさし


 在君的人生中、君是主人公也~💖