伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

芭蕉布(織物編)

 芭蕉布(ばしょうふ)とは、バショウ科の多年草イトバショウ(Musa liukiuensis)から採取した繊維を使って織られた布のことで、別名蕉紗(しょうしゃ)ともいいます。
 沖縄県および奄美群島の特産品で、薄く張りのある感触から、夏の着物、蚊帳、座布団など多岐にわたって利用されています。


 芭蕉布には、おおよそ500年の歴史があるとされ、琉球王国では王宮が管理する大規模な芭蕉園で芭蕉が栽培されて芭蕉布が生産されていました。
 また、一般庶民でも家庭菜園に植えた芭蕉で、各家庭ごとに糸を紡ぎ機を織って普段着として使用されていたものです。


 しかしながら、この布を作るには膨大な労力が必要なため、現在では生産量が激減して、一反(一人分)数十万円もする高級反物に位置付けられています。



【喜如嘉の芭蕉布】
 1974年に沖縄県大宜味村(おおぎみそん)喜如嘉(きじょか)の芭蕉布が国の重要無形文化財に指定されてから喜如嘉は「芭蕉布の里」として知られています。



【芭蕉園での繊維採取風景】
 一反(着物一着分:幅約37㎝長さ約12.5m)の芭蕉布を織るために必要な芭蕉は200本といわれ、葉鞘を裂いて外皮を捨て、繊維の質ごとに原皮を分けます。
 内側の柔らかな繊維を用いるものほど高級品とされています。
 なお、このイトバショウ(糸芭蕉)はリュウキュウバショウ(琉球芭蕉)とも呼ばれるバナナの仲間ですが、小さい実の中に大きくて硬い種子が数多く入っているので余り食用には適しません。



【芭蕉布の機織り風景】
 灰によって精練作業を行った薄茶色の芭蕉の糸をそのまま無地織にするか、或いは濃茶色や藍色に染めてから織り上げます。
 高級品になると、模様を織り込むこともあります。



【喜如嘉祭り】
 芭蕉布で作った着物を着て踊るので、別名「芭蕉布祭り」とも呼ばれています。


 同名の「芭蕉布」という楽曲は、直接的にはこの織物を題材としていますが、間接的には「作詞者吉川安一の幼いころの記憶を縦糸に、島国の温暖な自然の美や独自の言語、文化を横糸」にして織り成された沖縄賛歌です。


 芭蕉布(音楽編)は、こちら↓