伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

贈り物:禮物:The Gift(最終篇)

【「友情のワクチン」 イラスト©日本台灣交流協會&台灣衛生福利部】


 台湾はこれまで日本に対し、東日本大震災の際に世界最高額となる多額の義捐金を寄付し、日本で新型コロナウイルスの感染が拡大したときにはマスクを寄贈するなど、日本が困難に直面するたびに、いち早く手を差し伸べてきました。
 今回は逆に日本から台湾へ、6月4日と7月8日・15日に新型コロナウイルスのワクチン約330万回分が無償提供されたことを受け、蔡英文総統を始め多くの台湾の人々が「ありがとう」「一緒にがんばろう」といったメッセージを発信しています。


 また、台湾のグローバル通販サイト「Pinkoi」を運営するピンコイ株式会社(本社:台湾、日本支社:東京都渋谷区、代表取締役社長:ピーター・イェン)では、日本に対する感謝の気持ちを込め、台湾デザイナーたちのショップを集めた特設ページをオープンしています。
 そのショップ数は200以上に上り、台湾デザイナーによる「ありがとう」という感謝が込められたデザインアイテムが掲載されています。


 【台灣のデザイナーが作った携帯充電器とマスク】


 「贈り物」の価値は、表面的には「物」そのものの価値によります。しかしながら、真の価値は「物」そのものではなく、「物」に託された「気持ち」の方にあります。


 6月中旬、台湾でコロナウィルス感染が急速に拡大し始めたときに、中共は台湾に対し「中共製ワクチンを提供する用意がある」と表明しましたが、台湾当局は「”偽善”は必要ない。中共が邪魔しなければワクチンは国際社会から購入できる。」と回答して即刻拒否しました。
 その理由は、中共製のワクチンそのものが安全性や有効性の両面で台灣では使用承認していないものであるということもありますが、中共が英国AZ社のワクチンの台灣や香港への販売代理権を横取りするなど台灣の国際社会からのワクチン購入を妨害していることにあります。
 また、中共の所謂「ワクチン外交」は、無償の慈善事業ではありません。
 殆どが有償で、しかもワクチン提供に当たっては、政治的、経済的、軍事的な譲歩などの見返りを相手国に要求しています。
 中共のこの邪悪なたくらみを、台灣では「偽善」と表現しているのです。


 中共は、台灣へワクチンを提供する我が國に対し、「台灣へのコロナワクチン提供を政治的に利用すべきではない。」と厚顔無恥な妄言を吐いて日台両政府を恫喝する試みに汲々としています。


 このような事情を承知したバルト3國の1國リトアニアは6月22日、台灣へAZワクチン2万回分を贈ると発表しました。
 人口僅かに約280万人で決して裕福とは言えないリトアニアは、自国でも中共が撒き散らしたコロナウィルスの深刻な被害が拡大しており、ワクチンの余剰分はありません。
 そのリトアニアが貴重なワクチンを台灣に贈るのは、リトアニアがかつてソヴィエト連邦に併合されて共産党独裁の恐怖政治に苦しめられた経験があるからです。
 つまり、この2万回分のワクチンには、「中共独裁主義侵略主義全体主義強盗集団の恫喝に負けるな。」というメッセージと、リトアニアは自らの身を削ってでも友好國台灣の友人を支援するという「気持ち」が込められているのです。


 リトアニアが贈ったワクチンの量は、日本が贈ったワクチンの100分の1以下に過ぎません。
 しかしながら、その贈り物に込められた「気持ち」は、日本に勝るとも劣らないといえるでしょう。


 リトアニアと同様、旧ソ連の圧政に苦しめられた東欧のスロバキアも7月16日、昨年台灣から贈られたマスクの返礼として台灣にワクチン1万回分を送ると発表しました。


 前回と前々回の記事「贈り物:禮物:The Gift」の前・後篇でご紹介したとおり、日本から贈ったワクチンに対し、台湾人の殆どすべての人は、日本人の「気持ち」を理解して感謝の意を表明しています。しかしながら、台灣のSNSでは、ごく一部に日台両政府を非難する匿名投稿者のコメントも見られます。
 概して匿名投稿者とは、自分の書いた記事やコメントに責任を取る意思がありません。
 そのような輩の愚劣な意見は信用するに足りず、伊賀山人は原則として匿名投稿者のSNS等を読むことは有りませんが、今回だけは特別に当記事を立てるために必要最小限だけを読んでみました。 
 すると、このような悪質なコメントの使用言語はほぼ例外なく、台灣で使用されている正體字ではなく中共で使用している簡体字或いは日本語で書きこまれています。匿名投稿者については、その身元が簡単には確認できないので断言はできませんが、恐らくは中共の心理戦の一環としてネットで世論誘導を行う「網軍(もうぐん)」の構成員或いは日本政府を批判することに自己陶酔する支那・朝鮮人もどきの日本人であろうと考えます。


 筆者注:蛇足ながら、伊賀山人の場合は、数年前からの読者の方々であればご承知のように、当ブログの中で、住所(事務所)、氏名、電話番号、メルアドに至るまで公開していますので、すべての記事は根拠に基づき責任を持って記載しています。


 3箇國からのワクチン提供の申し出を受けて、台灣の蔡英文総統は、自らのフェイスブックで、日本、リトアニア及びスロバキアそれぞれの國に対し、絶大なる感謝の意を表明しています。
 「贈り物」が、現在の台灣が最も必要としているコロナワクチンであることに感謝しているのは言うまでもありません。
 しかしながら、同じコロナワクチンの提供であっても、中共からの申し出は即座に拒絶しています。


 「贈り物」の本質は、「物」そのものの受け渡しではなく、「物」に託して「気持ち」を伝えることにあります。
 贈る方の気持ちが「善意」や「激励」や「御礼」などであれば、受け取る方は「感謝」や「幸福感」などの「気持ち」を返してきます。
 けれども、贈る方の気持ちが「悪意」を腹蔵する「偽善」であるならば、受け取る方は感謝するどころか「憎悪」や「憤怒」の気持ちを示して、受け取りを拒否します。


 以上要約すると、贈り物とは、形而下で「物」の動きだけに着目すると贈られた方が一方的に価値を受け取るように見えますが、形而上の「気持ち」に着目すると贈られた方よりも贈った方が更に多くの価値を受け取ることができるといえるのであります。


 今回の日本から台灣へのワクチン贈与にあたっては、一部の不埒者が歪曲引用捏造記事や悪質な嫌がらせコメントを垂れ流すこともありましたが、台灣では蔡英文総統を始めとして、中華民國政府及び地方政府並びに国会議員、地方議員及び2700万人の市井の人民に至るまでほぼ例外なく感謝の意を表しています。
 台灣一の高層ビルや老舗ホテルでは感謝の言葉をイルミネーションで表示し、台灣最大の通販サイトでは、日本への感謝を主題とするデザイナーグッズが作成されています。
 その他にも様々な感謝イベントが催されています。


 これらの事実に鑑みると、日本がワクチンに込めて贈った「善意」「友情」「御礼」などの気持ちよりも、台灣から帰ってきた「感謝」「友情」「幸福」などの気持ちの方が大きいと言えるのかもしれません。



日本和台灣,就像是一對翅膀。

只要一邊受傷了,另一邊就會努力支援側翼。

相互扶持下讓兩翼都有活力,才能夠飛的更遠。