伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

風樹の嘆 (ふうじゅのたん):樹欲靜而風不止,子欲養而親不待。

 「風樹の嘆 (ふうじゅのたん)」とは、故事成語の一つで、「親に孝養をつくそうと思うときにはすでに親が死んでしまっていて、子供の思いをつくすことができない」という嘆きを表わしたもので、「風樹の悲しみ」「風木の嘆」「風木の悲しみ」ともいわれています。


 「風樹」と「親孝行」との関連性が分かりにくいため、現在、日本では殆ど使われず、「親孝行したいときには親はなし」という諺に取って変わられています。


 今回は、この「風樹の嘆」の語源とその用例とをご説明します。


 「風樹の嘆」は、今から約2200年ほど前の前漢の韓嬰 (かんえい:約紀元前200年-紀元前130年))が 著わした「『韓詩外伝』九」に収録されている春秋時代の思想家孔子(こうし、紀元前552年9月28日‐紀元前479年3月9日)が旅先で出会った皋魚(こうぎょ)という賢者から聞いた話の中の次の一文が出典となっています。
 なお、同じ故事が、孔子一門の説話のうち『論語』に漏れたものを蒐集したとされる《孔子家語(こうしけご)•致思第八》にも掲載されていますが、ここでは皋魚(こうぎょ)の名を丘吾子(きゅうごし)に作っています。


樹欲靜而風不止,子欲養而親不待也。


樹(き)静かならんと欲すれども、風止まず、 

子(こ)養わんと欲すれども、親待たず。


 この文意は、「例え、樹が静かにしていようとしても風が吹き止まず木の葉が揺れ騒いで樹の思い通りにはならない。同様に、子供が親孝行をしたいと思った時には親はそれを待つことなくすでに世を去っていて子供の思いを果たすことが出来ない。」ということで、本来の意味は時期を失さぬようにすべきであるということですが、それから転じて親孝行の勧めとなっています。


 これを対句に仕立てた「樹欲靜而風不止,子欲養而親不待(也)。」は、台灣では小学生でも知っている著名な成語で、昔から書画にも書かれ、また最近ではブログでも関連する記事が数多く掲載されています。


 その中から、今回は「心靈湖畔(心の湖畔)」と題するブログで紹介されている小羽(しょうう)という人の体験談について転載します。


 動画だけで正確に理解できると思いますので、伊賀山人の下手な和訳は動画の後に追記しておきます。



【心靈湖畔】

【心靈湖畔】樹欲靜而風不止,子欲養而親不待



【樹欲靜而風不止,子欲養而親不待】

【樹が静かにしようとしても風は止まず、子が親を養おうとしても親は待たない】


小羽在花店門口停了車

他打算向花店訂一束花

要送給遠在故郷的母親

小羽さんは花屋の店先で車を停めました。

彼は花屋で1束の花の宅配を予約するつもりでした。

遠くの故郷にいる母親に送るためです。


小羽正要走進店門時

發現少女孩坐在門口哭

走到少女孩面前問她説

「妳爲什麽坐在這裡哭?」

小羽さんがちょうど店の扉を入ろうとした時、

小さな女の子が戸口の前に座って泣いているのを見つけました。

女の子の目の前に行って彼女に聞きました。

「君はどうしてここに座って泣いているのかね?」


少女孩哭著説

「我想買一朶玫瑰花送給媽媽

可是我的錢不夠」

小羽聽了感到心疼

女の子は泣きながら話しました。

「私はバラの花を1本買いたいの。ママに贈りたいの。

だけど、お小遣いが足りないの。」

小羽さんは、これを聞いて心が痛みました。


於小羽牽著少女孩的手走進花店

訂了要送給母親的花束

買了一朶的玫瑰花給女孩

そこで、小羽さんは女の子の手を牽いて花屋に入りました。

自分の母親に宅配便で送る花束を予約してから、

1本のバラの花を買って、その女の子にあげました。


走出花店時

小羽向少女孩提議

要開車送她回家

花屋を出てから、

小羽さんは女の子に、

車で彼女の家まで送ってあげようと提案しました。


少女孩展開笑容的説

「眞的要送我回家嗎?

可是叔叔 我媽媽住的地方很遠」

女の子は弾けるような笑顔で聞きました。

「本当に私の家まで送ってくれるの?

でも、小父さん 私のママの住む場所はとても遠いのよ」


小羽微笑著説

「早知道就不説載妳了」

「哈!哈!哈!我開玩笑的啦」

小羽さんは微笑んで言いました。

「それをもっと前に知っていれば、君を車に乗せるなんて言わなかったのにね」

「ハ!ハ!ハ! いや冗談、冗談だよ」


依少女孩指引開著過去

但是没想到走出市區後

再随著蜿蜓的山路前行

竟然來到了一座墓苑區

女の子の指示どおり車を進めて行きました。

ところが、思いもよらぬことに、市街区を出た後、

くねくねしている山道を進むと、

なんと一画の墓苑に着きました。


少女孩把花放在墳墓前

女の子は花を手に取ってお墓の前に供えました。


小羽才知道

她母親一個月前剛過世

爲了要獻上一朶玫瑰花

一大段遠路想要用走的

小羽さんは漸く全てを理解しました。

彼女の母親が丁度1箇月前に世を去ったこと。

彼女は1本のバラの花を供えるため、

墓までの一大遠路を遙々と歩いてくるつもりであったことを。


小羽將少女孩回家後

然後轉身折返回去花店

馬上取消了代寄的花束

随即改買了一大束鮮花

小羽さんは、女の子を家まで送り届けた後、

すぐに身を翻して花屋に戻りました。

直ちに、宅配の花束の予約を取り消して、

すぐに、改めて新鮮な大きな花束を買いました。


拿著花走出了花店後

心急如焚的開著車離開

奔往五小時車程的故郷

他要親自將花獻給媽媽

花束を持って花屋を出ると、

はやる心で車を走らせました。

5時間の道のりの故郷へ馳せて、

彼自ら母親に花束を捧げるために。


小羽深深的領悟到

少女孩的年紀都會爲了

獻上一朶玫瑰花給離世的媽媽

而不畏路途遙遠

小羽さんは深く深く悟りました。

あのような年端もゆかぬ女の子ですら

世を去った母親に1本のバラの花を捧げるためには、

道程が遙かに遠くても恐れはしないのに、この自分は一体…


同様爲人子女

難道還可以不懂

「樹欲靜而風不止,子欲養而親不待 」

同様に、人の子たる者、

なかなか、理解することは難しいものです。

「樹が静かにしようとしても風は止まず、子が親に孝養を尽くそうとしても親は待ってはくれない」ことを。