伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

『うさぎ』童謡

   

  【小英家的月餅】(英ちゃん家の月餅)      

 静夜思 (静かな夜に思う)

               伊賀山人作

牀前看月餅(牀前月餅を看る)

疑是兔月餅(疑ごうらくは是れ兔の月餅かと)

擧頭望山月(頭を擧げて山月を望み)

低頭食月餅(頭を低れて月餅を食らう)


(現代口語訳)

ベッドの前に月餅が置かれているのを見つけたが

もしかしたら、これはウサギさんの月餅かな?

頭を挙げて山の上にかかる名月を見ていると自然に

頭が下がってきて月餅を食べてしまった。(ウサギさんご免なさい)


 童謡の『うさぎ』は、1892年(明治25年)に元文部省音楽取調掛の伊沢修二が下野した後に編集した『小學唱歌第2巻 』に収録している楽曲で、当時、国の検定を受けて音楽の教科書にも採用されています。
 この曲は、現在でも文部科学省が公示している「小学校学習指導要領」に基づき、小学3年生の音楽の教材として使用されています。
 元々この曲は江戸時代から歌い継がれている日本古謡ですので、作詞・作曲者は不明です。


 歌詞は、「うさぎうさぎ なに見てはねる 十五夜お月さま 見てはねる」だけが全文で、兔が月をみて跳ねる様子を詠ずるだけの非常に短いものです。
 詞中の「なに見てはねる」は、元々「なにを見てはねる」でしたが、1941年(昭和16年)に國民學校初等科1、2年生用の藝能科音樂の教科書である『うたのほん下巻 (2年生用) 』を文部省が発行したときから、"を"の文字を抜いた歌詞になっています。


 詞中の「十五夜」とは、月の満ち欠けを基準とする旧暦15日の夜のことで、毎月十五夜はありますが、最近では旧暦8月15日の夜、つまり「中秋の名月」を鑑賞する十五夜だけを指すことが多くなっています。


 十五夜に満月が見られるのかというと、必ずしもそうではありません。
 旧暦の日付は、月の朔(さく:新月の意で月齢0)を含む日を「1日」としているので、15日の月齢は14前後ということになります。
 月の望(ぼう:満月の意で月齢は14~16)の月齢は平均的に14.8ですので、通常の年の満月は旧暦16日になることの方が多くなります。
 ところが、月の軌道が楕円であることから、満月の月齢も14~16くらいの範囲で変動します。
 今年の旧歴8月の満月の月齢は最小に近く13.96ですので、例年になく珍しく旧暦8月15日(新暦9月21日)に、それも朝の9時ごろに満月となります。
 当日夕方見上げる月は、満月から既に欠けはじめていることになりますが、見かけではほとんど分りません。


 日本でも唐土でも、昔から、月面の模様はうさぎが餅つきをしているように見えると言われています。
 今夜は空を見上げ、月のうさぎを眺めながら(月が見えない場合は想像しながら)声高らかに『うさぎ』の歌を御唱和ください。


『うさぎ』

『兔子』 

              作詞・作曲者不詳

うさぎ うさぎ

なに見て はねる

十五夜 お月さま

見て はねる

兔子 兔子

看什麽 跳躍

十五夜 月娘

看著 跳躍




うさぎうさぎ(秋の童謡・唱歌)