伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

楊琴

 【揚琴演奏】
 揚琴(ようきん:ヤンチン)は洋琴とも称する打弦楽器で、明清ごろに西方から支那に伝わり、嘗ては日本でも明清楽で使われていました。



 【揚琴】
 揚琴は、むき出しのピアノのような構造で、梨の木から作った台形の木に、144本の金属弦を張ったものです。
 これだけ多くの弦があると、正確な音程に調弦するだけでも気の遠くなるような時間がかかります。
 これを2本の竹の撥(ばち)で木琴を弾くように敲くことによって音が出ます。



 【撥】
 撥は、細い竹の柄にゴムを張ったもので、これで2~数本一組に張られた複数の弦を一度に打つことにより音が出ます。
 従ってその音色は単音ではなく、大正琴とマンドリンとハープを併せた様な重層的な和音となって響きます。
 複雑に張られた多くの弦を間違わずに弾くには、相当の修練を必要とします。


 今回は、台灣桃園県(現在は中華民國行政院直轄の桃園市)にある龍壽國民小學校で「龍壽國小揚琴隊」というクラブ活動をしている児童の演奏をご紹介します。
 曲目は、台湾の第2国歌ともいわれる台湾民謡「望春風」です。




龍壽國小102.5.25揚琴表演望春風
 注: 102.5.25とは、中華民國102年(2013年)5月25日のことです。



 附記:台湾芸術大学 陳映如小姐による模範演奏
    

國樂演奏示範-揚琴

我家在那裡(私の家はそこにある)


 「我家在那裡」は、1972年 の台湾映画、「晚秋」の主題歌として発表された楽曲です。


 作詞、作曲、演唱共に劉家昌ですが、この人は非常に才能豊かな芸術家で、この映画では監督と主演も務めています。


 この歌曲は、故郷の我が家のことを詠ったものですが、日本ではその詩を知る人は殆どいません。しかしながら、その曲だけは1977年さだまさしが翻案した詩を付けてカバーした「桃花源」で知られています。


 今回は、原詩・原曲を蔡幸娟小姐の演唱でご紹介します。
 美しい景色の中に建つ住み慣れた我が家のことを、流れるようなメロディーに乗せて、優しく伸びやかに歌い上げています。


 我家在那裡  
 私の家はそこにある
                  作詞・作曲:劉家昌 演唱:蔡幸娟
 南風又輕輕吹起, 吹動著青草地
 草浪緩緩推來推去, 景色真美麗
 夕陽也照著大地, 綠草披上金衣
 草浪夕陽連成一片, 真叫人著迷

 南風がまたそっと吹き始めて、青い草原を吹きぬけてゆく
 草の波はゆっくりと寄せては返し、景色は本当に美しく麗しい
 夕日がまた大地を照らすころ、緑の草は上着をはおったように金色に染まる
 草の波と夕日は渾然一体となって、本当に人を夢中にさせる


 每當我經過這裡, 忘掉一切憂慮
 還有一條青青小溪, 伴著青草地
 順著小溪看下去, 木屋站在那裡
 那是我溫暖的家, 我住在那裡
 
 いつも私はここを通るとき、すべての悲しみや心配事を忘れてしまう
 また一筋の青々とした谷川があって、草原の傍に流れこんでいる
 谷川に沿って見下ろすと、木造りの小さな家がそこに建っている
 それが私の温もりある家で、そこに私は住んでいる


 順著小溪看下去, 木屋站在那裡
 那是我溫暖的家, 我住在那裡
 
谷川に沿って見下ろすと、木造りの小さな家がそこに建っている
 それが私の温もりある家で、そこに私は住んでいる


那是我溫暖的家, 我住在那裡 
それこそが私の温もりのある家で、そこに私は住みつづける




蔡幸娟_我家在那裡(200704)


 

 【参考添付】


   ♪桃花源 

            詞 さだまさし 曲 劉家昌 1977年(S52)

       

 あなたの便りが峠を越えて  私のお家に届く頃

 南風吹いて稲穂がそよぎ  あなたの里は黄金に染まる

          

川のほとりには水車がひとつ 静かに時を刻んでいます

野苺色した夕陽の中に 荷馬車の影絵が浮かんでいます


仔牛が生まれたことのほかには 何にも変わりはないけれど

あなたを待つ日々のたわむれにと 私は編み物 覚えました