伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

時代(中島みゆき)


 「時代」(じだい)は、日本のシンガーソングライター中島 みゆき(なかじま みゆき、本名:中島 美雪(読みは同じ)、1952年2月23日 - )が1975年9月25日にレコードデビューした翌月の1975年10月12日に発表し、同1975年12月21日に自身2枚目のシングルレコードとして発売した楽曲です。


 中島みゆきの独特な作風と個性的な歌唱法は、デビューから45年を経た現在でも幅広い年齢層の支持を受けています。


 雑誌『ダ・ヴィンチ』2007年10月号の中島みゆき大特集によると、彼女は自らの歌作りについて、「トレンドを追う情報収集のようなことは自分にはできない。私に何ができるのかというと早さより遅さであり、先を急ぐ人たちは、たいてい何かを落としてしまうので、自分は笊(ざる)を持って、それを拾っていこうかなと考えている」と語っています。


 その言のとおり、彼女の詞作には時代の最先端を行き脚光を浴びる強者を高らかに謳い上げるようなものはなく、どちらかというと時代に乗り遅れた日陰者の弱者にそっと寄り添い間接的にそれとなく応援するような作品が多く見られます。また、巧みな比喩表現と主語の省略による包括的かつ抽象的な表現に特徴があり、聞く人それぞれの立場や境遇に応じた解釈ができる深遠さが、世代を超えて支持される理由の一つにもなっています。
 曲については、音域がそれほど広くはないので、素人でもカラオケで十分歌えますが、楽譜を見ると、三連符や転調を多用し場合によっては#が5個も付くロ長調を使用するなど非常に技巧的なものになっており、正確に歌いこなすのは職業歌手でも難しいものになっています。
 音域は、彼女自身が「コントラアルト」(contralto:コントラルト又アルト)と標榜しているとおり、女声としては低い方で、高音で絶叫するような歌唱法が主流の現在、珍しい存在になっています。彼女の歌唱法は、基本的にはアルトの声で朗々と歌い上げるものですが、曲調や詞想に応じて幾つかの声色を使い分けており、場合によっては1曲の中でも声色が変化していることが多々有ります。
 ラジオ番組などで話している声を聞くと、アニメのキャラクターのような高音の声で、歌唱とのギャップが大きく、初めて聞いたときはとても中島本人とは思えませんでした。


 普段の彼女は、巧まざるユーモアの持ち主で、2009年11月3日、長年の音楽活動の功績により紫綬褒章を受章した際のインタビューでは、「 思いがけずうれしいことの表現に『棚からボタ餅』と申しますが、今の私の気持ちは『棚から本マグロ』くらいの驚きでございます。ふつう、何かを頂けそうな場合には二度くらいは辞退して、それでもとおっしゃるならちょうだいするのがマナーなのでございましょうが、褒章となりますと『ふつう』ではないことですので、辞退なんかしたら二度とこんな機会はないかもと思いまして、即座に『いただきます!』と、お返事してしまいました。」とコメントしています。


 歌手の紹介が長くなりましたが、今回ご紹介する「時代」(じだい)は、中島みゆきが作詞・作曲した楽曲で、1975年10月12日のヤマハ音楽振興会主催の『第10回ポピュラーソングコンテストつま恋本選会』と同年1975年11月16日の『第6回世界歌謡祭』で演唱してグランプリを受賞し、その直後の12月21日にシングルレコードを発売して、20万枚を売り上げるヒット作品となりました。
 その後、学校の卒業式で歌われたり、音楽の教科書に掲載されたりして親しまれ、2007年に「日本の歌百選」にも選ばれています。
 2010年にはフジテレビ開局50周年記念ドラマ『わが家の歴史』のエンディングテーマとしても用いられています。


 曲は元々四分の四拍子ですが、三連符が多用されていることから、八分の十二拍子に書き換えられた楽譜が多く存在します。この際、四拍子の時の八分音符が十二拍子でも付点を付けずそのまま記載されていますので、両者の縦は微妙に異なることになり譜面どおりに演唱するとリズムがやや異なるものになります。
 歌詞の大意は、「悪い時代がいつまでも続きはしない。今は別れた恋人たちもまた巡り合うことが有る。今は倒れた旅人達もまた歩き出せるようになる。」と詠じるもので、そのような絶望の淵にある人々に声高に頑張れとは言わずに、それとなく応援するものになっています。
 この歌詞には、一人称・二人称の主語は書かれていませんので、歌いだしで悲しみの底にいる人は、歌い手自身とも聞き手の方とも解釈できます。
 詞中に見える「時代はまわる」「時代はめぐる」との表現は、「時代は目まぐるしく変化する」とも、「季節が巡るように悪い時代と良い時代は繰り返し訪れる」とも解釈し得る深遠なものです。
 また、「生まれ変わって」の一句は、語義のとおりであれば死後の転生に言及しているようにも見えますが、彼女の作風から考えると、これも比喩表現としての暗喩であり、直喩としては「生まれ変わったように」と解釈すべきでしょう。


 高度経済成長期に、時代の先端を肩で風を切って走り抜ける人々の後ろの方で、彼らが目もくれずに落としていった弱者への共感や思いやりを拾い集めようとして書き上げた、中島みゆき23歳の折の作品です。



 時代
 時代
                   中島みゆき作詞・作曲・演唱


今はこんなに悲しくて
涙もかれ果てて
もう二度と笑顔には
なれそうもないけど

如今內心感到 如此的悲哀
淚水流盡 無法哭出來
已經再向往日的笑容
好像不能返回,不過


(間奏)


そんな時代もあったねと
いつか話せる日が来るわ
あんな時代もあったねと
きっと笑って話せるわ
だから今日はくよくよしないで
今日の風に吹かれましょう
まわるまわるよ 時代はまわる
喜び悲しみ繰り返し
今日は別れた恋人たちも
生まれ変わって めぐりあうよ

“也有過這樣的時候啊”
會有那麼一天 終於可以講出來
“也有過那樣的時候啊”
一定會有一天 能夠笑著講出來
所以吧 今天你就別再煩惱
被今天的風吹吧
流轉 流轉 時代總在流轉  
喜悲 悲喜 永遠重複
在今天分手的戀人們啊
也終究能夠擺脫過去 邂逅新的相逢吧  


旅を続ける人々は
いつか故郷に出会う日を
たとえ今夜は倒れても
きっと信じてドアを出る
たとえ今日は果てしもなく
冷たい雨が降っていても
めぐるめぐるよ 時代はめぐる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ

不斷走在旅路的遊子
總有一天也會遇見故鄉
就算今晚我倒下身軀
也要堅信有一天能再從這扇門走出去
就算今天等待我的是無休無止的
冷雨一場 我也不會懼怕和退縮
循環 循環 時代總在循環
別離 相遇 永遠重複   
在今天倒下的遊子們啊
也總會有洗心革面的一天 再度出發吧


(間奏)


まわるまわるよ 時代はまわる
別れと出会いを繰り返し
今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって歩き出すよ
流轉 流轉 時代總在流轉 
分合離聚 不斷重複
今天跌倒的遊子們
一定能站起來 再次出發


今日は倒れた旅人たちも
生まれ変わって 歩き出すよ

今天跌倒的遊子們
一定能站起來 再次出發



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小さなヒーロー

 【6歳のブリッジャー・ウォーカー(左)と4歳の妹(右)】


 米国西部のワイオミング州に住む6歳の少年ブリッジャー・ウォーカー(Bridger Walker)は、7月9日に顔に90針縫う大怪我を負いながら、4歳の妹を猛犬の攻撃から護ったことにより、家族からヒーローとして称賛されています。


 この事件は、ブリッジャーの叔母であるニッキ・ウォーカー(Nikki Walker)が、インスタグラム(Instagram)に投稿したことによりハリウッド俳優を始め多くの人々の知るところとなりました。


 事件当日、たまたま現場を通りがかった叔母のニッキは、ブリッジャーと猛犬との闘いを目撃しました。
 猛犬がブリッジャーの妹に近づき始めた時、彼は犬が妹を摑まえないようにするため犬と妹の間に割り込みました。
 すると、犬は彼の顔と側頭部に噛みつきました。
 彼は、渾身の力で犬を突いたり蹴ったりして振りほどき、妹の手を掴んで一緒に安全な場所まで走って逃げました。


 記事冒頭の画像は、叔母のニッキの投稿に含まれている手術後のブリッジャーと妹の写真です。
 この写真を撮影する時、ニッキはブリッジャーに、なぜ危険な猛犬の前に立ちふさがったのかを訊ねています。
 ブリッジャーは彼女に「もし誰かが死ななければならないとしたら、それは僕だと思った。」と答えています。
 6歳の少年がこのように答えたのには理由があります。
 実は、彼はアメリカのスーパーヒーロー映画「「アベンジャーズ」シリーズの大ファンで、中でも複数のスーパーヒーローを束ねる指揮官のキャプテン・アメリカ(主役クリス・エバンス)を尊敬しているからです。


 叔母のニッキは、インスタグラムの中で「私たちはこの勇敢な少年を愛し、他のすべてのスーパーヒーローたちに、彼らの仲間入りを果たしたこの最も若くて新しいヒーローについて知ってもらいたい。」と述べています。
 この記事を読んだハリウッド俳優から続々とコメントが寄せられています。
 スーパーヒーローの指揮官キャプテン・アメリカからは、「君こそヒーローだ!」と称賛するメッセージ動画がブリッジャーに贈られています。その中で、「君の行動はとても勇敢で献身的だ。妹は君のような兄を持って本当に幸運だ。」と語っています。
 ハリウッド女優のアン・ハサウェイも、自身のインスタグラムに本記事冒頭の写真とともに「あなたの半分でいいから勇気を持ちたいわ、親愛なるブリッジャー!」と投稿して、彼の勇気を称えるとともに、怪我の快復を祈っています。


 叔母のニッキは、その後の経過についても投稿していますが、その中で、「彼の傷はとても良くなってきています! 彼は元気で、彼の素晴らしい人格は無傷です。」「彼はまだあまり顔を動かして笑うことができませんが、私の投稿を見て、彼はニヤリと笑っていました。」と続けています。
 また、甥のブリッジャーの将来の夢が、科学者就中地質学者になることであると附言して、彼を支援したい方は、外出中に見つけた珍しい石の写真を撮って発見場所を付記して送ってくれるように依頼しています。
 現在、世界中から夥しい数の石の写真が、ニッキの許に送られています。
 何故なら、ニッキの動画は、既に「いいね」の数だけでも130万を超えており、閲覧者の総数は、恐らく1000万人を超えているからです。


 アメリカでは、男の美徳は、世の為人の為には身の危険を顧みず勇敢かつ献身的に行動することだと考えられています。
 その勇敢かつ献身的な行動を具現できる男こそが「ヒーロー」として称賛されます。
 この6歳の少年は、紛れもなく真のヒーローなのです。


 今回は「小さなヒーロー」についてご紹介し、併せて彼の傷の速やかな快復を祈って筆を擱きます。
 


 【傷口も順調に快復し、収集した石を前にご満悦のブリッジャー・ウォーカー】



引用元の記事: 記事内にリブログが多くデータ量が過大であるため、伊賀山人が所有しているような旧式パソコンでは画面が固まることが有るので要注意 ▼