伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

雪の日の訪問者

 【伊賀山居から望む雪景色】


 伊賀は朝から雪です。
 この雪の中を、わざわざ伊賀山人事務所に某宗教のご婦人が訪ねてきました。
 以下、その会話の概要です。


「ご近所に住む〇〇と申します。今日は《聖書》のお話に参りました。」
 言葉つきは丁寧で、例によって幼い子供連れです。
 雪も小降りになっていたので、少しだけ話をしてみました。


『聖書とはバイブルのことですか?』
「えっ ああそうです。」


『バイブルなら単なる昔話ですから何もご説明には及びません。』
「あっ いや そうじゃなくて聖書のことです。」
 どうも要領を得ません。


『ニューテスタメント、つまり新約聖書のことですか?』
「多分そうだと思います。」
 どうもこの宗教団体は、旧約と新約との区別もつかない人を伝道師にしているようです。


『ところで、貴女は、内村鑑三の《聖書講義》をお読みになったことはありますか?』
「えっ? いえ まだ……」


『では、それを一度お読みになってからもう一度お越しください。その時に改めて聖書のお話をしましょう。』
「あっ はい… 分かりました…」


 伝道師は子供の手を引いて立ち去って行きました。


 彼女が置いて行ったチラシによれば、この宗教団体は「〇〇〇の証人」というキリスト教系の新興宗教です。


 どのような宗教であっても、応分の対価の範囲内で、人の心を癒し精神の安定を保つことが出来るのなら特に問題はありませんが、その為にはカウンセラーと同様、それ相当の知識・経験や判断力が必要です。


 無知な伝道師によるマニュアル通りの言葉では、人の心を動かすことはできず、教団のイメージも決して良くはならないでしょう。


 また、雪の日の早朝、幼子に耐寒訓練まがいの試練を課すのは、キリストの大神の本意ではあるまいと感じた今朝の出来事でした。