伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

昨夜夢中 (昨夜の夢の中で)


 「昨夜夢中 」は、浙江省東部の港町である寧波市出身のソングライター李厚襄(1916—1973)が作詞・作曲して、1968年秦燕(呢喃)の原唱で発表された楽曲です。


 短い歌詞の中に、恋人を夢にしか見ることのできない乙女の心情を詠みこんでいます。
 また、この詞は殆どの句が平水韻平聲一東で到底されていて巧みです。


 今回は、詩意をよく表している遼寧省瀋陽故宮の風景と併せてご紹介します。
 なお、瀋陽故宮は、1625年に建築された後金時代の皇居で、後に清朝の離宮として使用されましたが、現在は瀋陽故宮博物院として一般公開されています。


 
 昨夜夢中
 昨夜の夢の中で
               作詞:李厚襄 作曲:李厚襄 演唱:不明
昨夜夢中,
月光照入畫樓東,
垂簾等郎眼矇矓,
忽見情郎在房中。

昨夜の夢の中で、
月光が華麗な楼閣の東から入りこんで来て部屋の中を照らし、
簾を下ろして彼を待つ霞んではっきりしない私の眼にも、
俄かに、恋人が部屋の中にいるのが見えた。


昨夜夢中,
桃花依舊迎春風,
郎情妹意兩相融,
醒來只覺一場空。

昨夜の夢の中で、
桃の花は昔のように春風を迎えて、
男の心と女の思いは二つとも融けて混じりあったのだが、
夢から覚めて、ただ一瞬の空しさを覚えた。


莫不是你又痴又呆,
莫不是你風情不解,
你到底是愛我不愛,
為什麼教我空等待。

まさかあなたは、愚かでにぶいわけではないでしょう、
まさかあなたは、この風情が分からないのでもないでしょう、

あなたは一体私を愛しているのですか、そうではないのですか、
どうして私を空しく待たせているのですか。


今夜夢中,
但願情郎再入夢,
且把珠簾垂下來,
莫教紅日驚好夢。

今夜の夢の中で、
ひたすら願うのは、恋人が再び夢に入って来たら、
真珠を散りばめた玉簾を巻き下ろして、
旭日にその素敵な夢を覚まさせないようにすることだけなのです。




昨夜夢中