伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

這一年 這一夜(この一年 この一夜:独唱版)

 
 《這一年 這一夜》は、音楽の魔術師とも高音王子とも謳われた台灣のシンガーソングライター張 雨生(チャン・ユーシャン 1966年6月7日 - 1997年11月12日)が、1994年9月5日に発表したアルバム《卡拉ok·台北·我》の全13曲中第7曲目に収録されている楽曲です。
 作詞・作曲・演唱共に張雨生本人が担当しており、彼の音楽感がよく表れている1曲です。


 歌詞の内容は、夕暮れ時の海岸で夕日の沈む光景を見た後、月や銀河や満天の星空の下で、愛する人と過ごした楽しくて幸せな思いのこの1年、更にこの1夜の心情を詠じたものです。
 この詞は、張雨生が大学生の頃に付き合っていた女友達と遊んだ春分の頃の台北の海岸での出来事を思い出して書いたもののようです。


 詩句には、禅語にも似た詩的表現が多く、また現代漢語の慣用句と思われる詩語も多用されているため、伊賀山人にとっては甚だ難解なものになっています。


 「読書百遍義自ずから見(あらわ)る」を敢行して力ずくで翻訳してみましたが、万一誤訳があるとすれば博雅の教えを請います。



這一年 這一夜
この一年 この一夜
                      作詞・作曲・演唱:張雨生


太陽燒紅了海洋
海洋包容了太陽
向晚天空缺掉一角
月亮探頭撒張網

眼觀鼻觀心口上
你那羞澀不能忘
我的手臂不勝扭曲

靠上你的肩膀
太陽は海を赤く燃やしました
海は太陽を包み込みました
夕方になって空の一角が欠けて落ちました
そこへ顔を出した月が海に沈みかけて 張られている網はないかと探していました
俯いて胸のあたりを見ている
そんなあなたの恥かしそうな姿を 忘れることはできません
私の伸ばしていた腕は自然と曲がって来て
あなたの肩を抱き寄せました


山頂一片白茫茫
風起滾層層浪花
向晚天空明暗更替
霞彩忙著點新妝

眼望雲望西天涯
你那出神不能忘
我的情緒傻傻

隨你飛進美麗烏托邦
山の頂きは見渡すかぎり真っ白でした
風は海辺に吹き寄せて幾重にも重なり合う波の花を巻き起こしていました
夕方になって空の明暗が変わりました
夕焼けの色彩は急いで新しい化粧を凝らしました
雲が西の天の涯に帰ろうとしているのを眺めている
そんなあなたがうっとりとしている姿を 忘れることはできません
私の心はぼんやりとして
あなたに付き従って美しい理想郷へと飛んで行きました


這一年 這一夜
回憶溫暖我疲憊
小黃燈書桌前
細數有心人情淚

看似清實迷離
情路又玄又是漩
為你 我更舉杯

好景當前 莫留連
この一年 この一夜
思い出は私の疲れきった心身を温めてくれます
黄色い燈火に照らされた机の前で
心から人の愛情と涙の数々を思っています
それらははっきりと見えるようで 実は本当にぼんやりしています
愛情の道はつかみどころもなくまた渦巻く流れのようです
あなたのために 私は更に杯を挙げて乾杯しよう
この素敵な景色の中を進んで行こう ここに留まっていないで…


(間奏)


獵戶星在前方亮
雙熊盤踞北極光
春分時候無際穹蒼
銀河舞會星宿忙

眼遊神遊老與莊
你那無語不能忘
我的胸口鼓鼓吹脹

歡樂幸福的遐想 這一年
オリオン座の星々は前方で煌めいています
二頭のクマ(大熊座と小熊座)は天の北極に屯(たむろ)して光っています
春分の時節の果てしない夜空に
銀河が舞い踊り星座がその周りを忙しそうに取り巻いています
見とれていて眼も心もいつか故郷の村へと遊びに行っている
そんなあなたの姿を何も話さなくても 忘れることはできません
私の胸奥は満ち足りて膨らみます
楽しくて幸せな思いの この一年


(間奏)


這一年 這一夜
回憶溫暖我疲憊
小黃燈書桌前
細數有心人情淚

看似清實迷離
情路又玄又是漩
為你 我更舉杯

好景當前 莫留連
この一年 この一夜
思い出は私の疲れきった心身を温めてくれます
黄色い燈火に照らされた机の前で
心から人の愛情と涙の数々を思っています
それらははっきりと見えるようで 実は本当にぼんやりしています
愛情の道はつかみどころもなくまた渦巻く流れのようです
あなたのために 私は更に杯を挙げて乾杯しよう
この素敵な景色の中を進んで行こう いつまでも留まることなく…



張雨生 - 這一年, 這一夜

張雨生-這一年這一夜



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