伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居して病を養う隠者の戯言です。

襟裳岬(台湾編)

  1974年の森進一のヒット曲『襟裳岬』は、台湾でも多くの歌手によってカバーされています。
 曲は吉田拓郎のものですが、歌詞は岡本おさみの詩的表現が難解で翻訳が難しいため、殆どが意訳というよりも全く別物の歌詞が付けられています。
 このため、歌題も「襟裳岬(鄧麗君1976)」だけではなく、「依舊是一個人(鳳飛飛1978)」「沙灘上的歌聲(蔡幸娟)」「仍舊一個人(蔡幸娟)」「「照顧我吧!愛神」「迎接好春天」など歌手ごとに様々なものがあり、中にはイントロだけは全く同じで中身は別の曲を付けた「我不辜負你(鳳飛飛)」という盗作もどきの変なものもあります。
 これらそれぞれのバージョンをそれぞれの歌手がお互いにカバーし合っているため、元々誰の楽曲であったのかを特定するのもなかなか困難です。


 台湾で最初にカバーしたのは、多分、「東洋の歌姫」と称えられた「鄧麗君(テレサ テン)」の「襟裳岬」が嚆矢かと思います。
 この曲は、襟裳岬と題してはいるものの、林煌坤の作ったその歌詞の内容には襟裳岬のことは何一つ出てきません。
 自分から離れていった男を思う女の心情を詠ずるその内容からは、「森進一版」よりも「島倉千代子版」の襟裳岬に近いものがあります。
 唯一、森進一版の岡本おさみの詩に近いところは、「那樣美 又溫馨」の1句です。
 これは、華語での読みが「ナヤンデイ ヨイルウチ(悩んでいるうち)」と聞こえます。恐らく、作詩者林煌坤が遊び心で入れたものだろうと考えます。


 この鄧麗君がカバーした「襟裳岬」を、蔡幸娟小姐が再カバーしていますので、今回も蔡幸娟版でご紹介します。



 襟裳岬
           曲:吉田 拓郎  詞(台灣國語):林 煌坤 演唱:蔡 幸娟
一節
海邊掀起浪濤   (海辺で巻き起こる大波が)
激盪了我的心   (私の心を激しく揺り動かす)
記得就在海邊   (あの頃の海辺のことをことを覚えているわ)
我倆留下愛的吻  (二人で交わした愛の口づけや)
那樣美 又溫馨     (あんなにも美しく心優しく芳しい思い出を)
如今只有我一個人 (今はただ私一人で)
默默地在追尋   (黙々と追い求めている)
追尋往事     (あの頃のことを追い求めている)
那段歡樂時光   (あの楽しかった時を)
那段美麗的夢   (あの美しかった夢を)
愛人 愛人 我的愛  (愛する人 愛する人 そして私の愛よ)
我等你回來    (貴方が返ってくるのを私は待っている)
訴說情懷     (そして本当の気持ちを話してくれるのを)


二節
海邊潮來潮往   (海辺に寄せては返す波が)
真叫我心迷茫   (本当に私の心を困惑させる)
記得就在海邊   (あの頃の海辺のことを覚えているわ)
我倆留下誓言   (二人で交わした誓いの言葉)
那地久又天長   (あの地の果て天の果てまで永遠にと誓った

如今只有我一個人 (今はただ私一人で)
默默地在徘徊   (黙々と彷徨っている)
徘徊海邊     (海辺を彷徨い)
想起往事片片   (あの頃のことを一つ一つ思い起こしている)
你已不在身邊   (貴方は既に傍にはいない)
愛人 愛人 我的愛  (愛する人 愛する人 そして私の愛よ)
我等你回來    (貴方が返ってくるのを私は待っている)
訴說情懷     (そして本当の気持ちを話してくれるのを)


三節
(一節再唱)


愛人你 我的愛 你是否已忘懷(愛する貴方 私の愛よ 貴方は忘れてしまったのかしら)
愛人 我的愛 你到底在何方 (愛する人 私の愛よ 貴方は何処にいるの)




蔡幸娟 襟裳岬 雲頂演唱會