伊賀の徒然草

伊賀名張の山中に閑居する隠者の戯言です。

何日君再來(いつの日君帰る)

 


 「何日君再来」(ホーリー ジュン ザイライ、邦題「いつの日君帰る」)は、、「夜來香(イエライシャン)」と並び称されるチャイニーズ・メロディーを代表する1曲です。


 この曲は、1937年に上海で製作された映画『三星伴月』の挿入歌として、当時の人気歌手周璇が歌い、空前のヒットとなりました。
 
 作詞者は貝林、作曲者は晏如ですが、それらの作者の思いとは全く離れたところで時の権力者達のさまざまな政治的思惑によって翻弄され、幾度となく演唱を禁止されるなど、数奇な運命をたどってきた歌謡曲として知られています。
 その原因の一つは、歌曲の聴取手段がラジオやレコードが殆どで歌詞を目で見ることのできない時代に於いては、「何日君再来」の発音だけを聞くと、漢字には同音異義語が多くあるため様々な意味に解釈されたことにあります。


 まず「何日君再来」が流行した当時、偶々支那事変が発生したため、.南京から武漢へ遷都していた国民政府当局者の中にはこの歌を、日本への徹底抗戦意識の減殺を目的として日本軍が意図的に流行させた「亡国の歌」であると見る者がおり、当時日本軍によって流布されていた他の中国語歌謡曲とともに「何日君再来」を排斥しようとする動きがありました。


 逆に日本軍の方では、「何日君再来」の「君」とは抗日戦に敗れ武漢から更に重慶へと撤退した「君(=蔣介石)」のことで、「いつ蒋介石は帰ってくるのか」と歌っているようにもとれるし、また「君」の中国語の発音が「軍」のそれと同じことから、「何日軍再来(いつ国民政府軍は帰ってくるのか)」と呼びかけているようにもとれることから、蒋介石や国民政府軍の反攻を期待する抗日的な性格を持った歌であると解釈されました。
 また逆に、「何」が「閡」(ガイ、「門構えに亥」で「妨げる」という意味)と同音のため「閡日軍再来(日本軍の再来を妨げよう)」という意味にもとれることから抗日的な歌曲だとみなされて、国民政府と解釈は異なるものの「何日君再来」を排斥しようとしました。


 大東亜戦争終結後の中華民国・台湾に於いても、外来政権である中国国民党政府の圧政に苦しむ本省人が歌うと、日本の植民地統治時代を懐かしみ、終戦後去っていった日本軍に向かって「(何日軍再来)いつ日本軍は帰ってくるのか」と呼びかけていると当局者は解釈しました。
 更に、「何」が「賀」と同音であり「賀日軍再来(日本軍の再来を慶賀する)」とも聞き取れることから、国民党政府が同歌の歌唱を引き続き長期に亘り禁止していました。


 しかし1978年頃、鄧麗君(テレサ・テン)が歌唱禁止の解けたこの曲を録音して復活させました。
 人気は徐々に上がって、1980年 9月には台湾各地で大ヒットして 今や中華民国のみならず、全世界の中国人に歌われるチャイニーズ・メロディの代表曲となり、その後も数多くの歌手がこの曲をカバーしています。


 その中から、今回は蔡幸娟小姐版をご紹介します。 


 なお、この歌詞は、一部、五言律詩の体裁を取り、また、唐詩を引用している部分もありますが、その説明は、又の機会に譲ります。 



蔡幸娟 何日君再來 台灣望春風 HD1440p


 何日君再来(いつの日にか君は帰る)
一節
好花不常開,  (素敵な花は常に咲いているとは限らないし、)
好景不常在。  (素敵な景色も常に見られるとは限らないわ)
愁堆解笑眉,  (積もる悲しみの中で、笑顔になろうとするのだけれども、)

涙灑相思帯。  (涙が溢れて、思いを寄せる二人の絆の帯を洗うほどなの)
今宵離別後,  (今夜別れた後は、)

何日君再来?  (貴方はいつまた帰って來るの?)
喝完了這杯,  (この一杯を飲み干したら、)

請進點小菜。  (どうぞ小皿のおつまみも召し上がってくださいね)

人生難得幾回醉,(人生で幾度も酔えるものではないのだから、)
不歡更何待!  (気まずい思いで今さら何を待つ必要があるの!)


台詞:
來、來、來,   (さあ、さあ、さあ、)
喝完了這杯再説吧。(先ずはこの杯を飲み干しましょう、話は後にして。)

今宵離別後,  (今夜別れた後は、)
何日君再来?  (貴方はいつまた帰って來るの?)


二節
道楽時中有,  (気晴らしの最中なのに、)
春宵飘吾哉。  (春の夜は、私をふらつかせようとするわ)
寒鴉依樹棲,  (冬の鴉は、木に依って棲み、)
明月照高臺。  (明るい月は、高殿を照らしているわ)
今宵離別後,  (今夜別れた後は、)
何日君再来?  (貴方はいつまた帰って來るの?)
喝完了這杯,  (この一杯を飲み干したら、)
請進點小菜。  (どうぞ小皿のおつまみも召し上がってくださいね)


人生難得幾回醉,(人生で幾度も酔えるものではないのだから、)
不歡更何待!  (気まずい思いで今さら何を待つ必要があるの!)


台詞:
來、來、來,  (さあ、さあ、さあ、)
再敬你一杯。  (一杯差し上げましょう。)


今宵離別後,  (今夜別れた後は、)
何日君再来?  (貴方はいつまた帰って來るの?)
  
3節
停唱陽關疊,  (別れの詩の陽関三畳なんかは歌うのをやめて、)
重擎白玉杯。  (白い玉杯をまた持ちましょう)
慇勤頻致語,  (ねんごろに色々話し、)
牢牢撫君懷。  (しっかりと貴方の思いを慰めましょう)
今宵離別後,  (今夜別れた後は、)
何日君再来?  (貴方はいつまた帰って來るの?)
喝完了這杯,  (この一杯を飲み干したら、)
請進點小菜。  (どうぞ小皿のおつまみも召し上がってくださいね)


人生難得幾回醉,(人生で幾度も酔えるものではないのだから、)
不歡更何待!  ( 気まずい思いで今さら何を待つ必要があるの!)


台詞:
唉…再喝一杯 乾了吧。 (あゝ、もう一杯飲んで、飲み干してね。)

今宵離別後, (今夜別れた後は、)
何日君再来? (貴方はいつまた帰って來るの?)


 

×

非ログインユーザーとして返信する

あと 2000文字

※は必須項目です。