腕利きの占い師になる秘訣
【占い師】
占い師になるには、資格も免許も必要ありません。
道具も、特に必要ありませんが、尤もらしくするには、上図のように筮竹という割り箸のようなものでも準備するとよいでしょう。
読者各位も、今すぐにでも占い師になれます。
そして、占いがよく当たれば腕利きの占い師として、名声を欲しいままにできます。
嘗て、占い師や、霊能者とかスピリチュアルなんとかなどを標榜する者がマスコミを賑わした時期があります。
彼らの占いは、当たります。
当たる占いの秘訣は、「包括事象の予言」と「確定事象の予言」とに特化することにあります。
その細部要領を、夢占いを例にとって、ご説明します。
【夕焼け空を飛ぶ赤トンボの夢】
この夢の場合においては、赤とんぼを吉兆として、
「近いうちに、何か良いことがある。」と、予言して構いません。
また、日が沈むことは、凶兆であるとして、
「近いうちに、何か悪いことがある。」と、全く逆の予言をしてもかまいません。
どちらの予言も大抵の場合、一箇月以内に的中します。
人は誰でも、概ね一箇月以内には、何か一つや二つは、良いことも悪いことも起こります。
このような予言を、「包括事象の予言」と言います。
また、この夢の赤トンボの色に着目して、
「赤色に注意していると災難を避けることができる。」と言っても構いません。
言われたお客さんは、占いの帰り道で、交差点の赤信号を注意して見るので事故を起こさないでしょう。
そして、どこかの交差点で、他人の交通事故でも目撃したことなら、この占い師の霊能力は、微塵も疑う余地のないものになるでしょう。
赤色が危険を表示する色であることは、昔から変わりません。
このような予言を、「確定事象の予言」と言います。
一世を風靡した霊能者の予知も、全て上記の様な「包括事象」と「確定事象」でした。
この要領で、腕利きの占い師に成ることができますが、超えてはならない一線があることを忘れてはなりません。
いたずらに、客の不安を煽り、有りもしない悪霊が憑いているなどと吹聴して、百均で買ってきたようながらくた土器を、厄除けと称して数万円で売りつけるようなことをすると、「霊感商法」となり、やがて詐欺罪で訴えられることになります。
【イタコ】
なお、占い師の中で、殆ど芸術の域に達しているのは、青森の恐山にいるイタコです。
イタコは、300年の歴史を持ち、今では、国の選択無形民俗文化財に指定されている由緒あるものです。
イタコになるための修行は厳しく、百を超える難解な経文の暗記、神降ろし、占い修行、死者の口寄せ、五穀絶ち、水ごり修行など、叡山の千日回峰行にも匹敵する苦しい修行に堪えぬく精神力の持ち主でないとなれません。
どこにでもいる、スピリチュアル某と同列に論じては失礼に当たります。
イタコが呼び出す霊は、全て下北弁で喋るので聞き取りにくいのが難点ではありますが、日本人だけではなく、マリリン・モンローや忠犬ハチ公の霊までも呼び出すことができます。
イタコが呼び出した霊も、先に述べたとおり、「包括事象」と「確定事象」とを語ります。
先日、亡くなった親族の話を聞くため、東京から、わざわざ訪れた若いご婦人にイタコが呼び出した霊が「包括事象」を語りかけました。
「よぐ来てぐれたの~ お父うは、あの世さ逝っても、いつも夕子のごとさ、忘れたごとはね~ 兄妹仲良く、お母あを大事にしてぐれ~」
父親の霊の話が一段落したところで、客の若いご婦人が口を挟みました。
『あの~ お父さんはまだ生きています。死んだお祖母ちゃんの話を聞きたかったんですけど~ それと~私は一人っ子で~兄妹はいません。 それに~さっきも言いましたけど~私の名前は~夕子ではなく朝子なんですけど~』
占いの前に、当然、お客さんの身上把握はしているのですが、イタコも高齢化が進んでいるようです。
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